創世記〜黙示録に至るまで、一貫した聖書理解には「アブラハム契約」が基盤にあります。そこを押さえておかないと、私的解釈に陥り易いのです。それにより患難時代後半〜永遠の御国へ至るまで、より理解が深まります。
【アブラハム契約】ー無条件契約
この契約は、聖書66巻全体を理解するのにとても重要な役割ー背骨形成とも言える役割ーを果たしています。
そこから過去、現在、未来へ広がっていくからです。
聖書の中で最初にメシアを預言している箇所は、創世記3:15の『女の子孫』です。
創世記5章では、誰が何年生きて『女の子孫となる家系の子』を産んだかが記されており、6章では、その『女の子孫』からメシアが誕生しないようにとサタンが堕天使を地上に送り込んで、神の創造外の『ネフィリム』を生み出し『女の子孫』の根絶を図りました。
その当時の罪に満ちた滅ぶべき世から、箱舟を通して『救い出された』のがノアとその家族の計8人です。
ノアの3人の息子から、人間の人種が分かれていきました。
・創世記10:2~5…ヤペテの子孫ーヨーロッパ系人種。白人。科学的思考能力が与えられました。
・創世記10:6~20…ハムの子孫ーアフリカ系人種。黒人。音楽や運動能力が与えられました。
・創世記10:21~31…セムの子孫ー東洋系人種。黄色人種。霊的資質が与えられました。
このセムの子孫の中の『アルパクシャデ』(10:24)が『メシアの家系』となり、その子孫『テラ』から『アブラム』が生まれました。
『地上の諸氏族』は、こうして増え広がったのです。
アブラムは信仰による『神の選び』てあり、神は「地上のすべての民族は、
あなたによって祝福される」ー創世記12:3bーと、ご計画を明らかにされました。
ノアの3人の息子たちから出た民族の他に、同じ『異邦人=ユダヤ人以外』の中に、アブラハムの血を引く『アラブ人…エジプト人の女奴隷ハガルによる “イシュマエル” の子孫と、後妻ケトラによる6人の息子 “ジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデヤン、イシュバク、シュアハ” の子孫と、ヤコブの双子の兄 “エサウ” の子孫』がいます。
神がアブラハムと結ばれた契約を継承したのは、約束の子イサクであり、イサクから神の契約を継承したのはヤコブであり、それがヤコブの十二人の息子たちに継承されていきました。
ですから、『イスラエル=ユダヤ人』というのは、『アブラハムーイサクーヤコブの3人を先祖に持つ者』となります。
私たち日本人は、アブラハムの血を引かない『異邦人』です。
ノアの息子のひとり、セムまで遡らないと『同祖』にはなりません。
アブラハム契約が記されているのは、創世記12章〜22章にかけて、全部で6箇所あり、「アブラハム契約」と呼ばれているとおり、この契約の当事者は「神とアブラハム」です。
そしてその契約内容は、三つの領域に分類されます。
⑴アブラハム個人に対するもの。
⑵その子孫であるイサクーヤコブと継承され、イスラエル民族に対するもの。
私たちは『日本人か外国人か』という区別をしますが、聖書では『ユダヤ人(イスラエル)か異邦人(ユダヤ人以外)か』という区分があります。
時々、私たち異邦人信者であるクリスチャンのことを『霊的イスラエル』だと言う方がおられますが、聖書にはそのような区分はありません。
この区分は、アブラハム契約以降、永遠の秩序に至るまであります。黙示録21~22章は『永遠の秩序』である新天新地/天のエルサレムについての記述です。
黙示録21:12ーイスラエルの子らの十二部族の名…ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、ダン、ナフタリ、ヨセフ、ガド、アシェル、ベニヤミン。
黙示録21:14ー小羊の十二使徒の十二の名…ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、ピリポ、バルトロマイ、トマス、マタイ、ヤコブ、タダイ、シモン、マッテヤ。
黙示録22:2ー諸国の民…異邦人のこと。
⑶異邦人に対するもの。
*アブラハム契約以降、聖書は黙示録に至るまで首尾一貫して「イスラエルと異邦人」を区別しています。
混同しないよう注意しましょう。
〜この契約が記されている聖書箇所〜
①創世記12:1~3ーアブラハム契約への最初の言及。
命令…わたしが示す地へ行きなさい。
約束…そうすれば〜あなたの名は祝福となる。
あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。
*アブラハム契約は片務契約であり、現在でも有効であるため、『イスラエルを祝福する者は祝福され、イスラエルをのろう者はのろわれる』と言えるのです。
②創世記12:7ー契約内容の再確認
約束ーあなたの子孫に、わたしはこの地を与える。
*アブラハムの子孫に対する約束であって、私たち異邦人信者への約束ではありません。
応答ーアブラムは自分に現われてくださった主のために、そこ(ベテル)に祭壇を築いた。
③創世記13:14~17ーロトと別れた後、ゆずりの地の広さの確認と子孫繁栄の約束。
*この契約内容を、神がだれに対して言われたかが重要となります。
現代の異邦人信者を『霊的イスラエル』と捉えてしまうと、着地点が大きくズレてきます。
*それは「アブラハム(個人)」と「アブラハムの子孫」であるイスラエル人に対してです。その契約を神が守られるには、アブラハムであれ、その子孫であれ、約束が成就する前に肉体の死を迎えてしまったら、ある時点で復活させなくてはなりません。
アブラハムたち旧約時代のユダヤ人の義人たちの復活は『千年王国前』、教会時代のメシアニックジューたちの復活は『携挙』のときに起こります。
ここに神のご性質(忠実な方)と復活の事実が隠されているのです。
④創世記15:1~21ー契約内容:アブラハムは一つの国の父となり、多くの国の父となる。
*「一つの国」…神が選ばれた国家としての「イスラエル」のこと。
民族としてのユダヤ人とは、アブラハムーイサクーヤコブの3人を先祖とする人々のことです。
*「多くの国」…アブラハムには全部で8人の息子たちがいました。エジプト人女奴隷ハガルとの間には「イシュマエル」ー創世記16:15
妻サラの亡き後、ケトラとの間に「ジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデヤン、イシュバク、シュアハ」の6人ー創世記25:1~2
約束の子イサク以外の7人のアブラハムの息子たちと、長子の権利を軽んじたエサウの子孫(エドム人)から「アラブ人」が出て、現在のアラブ諸国を形成しています。(イランはアラブ人ではありませんが、イスラム圏であり、現在イスラエルの最大の敵となっています)
創世記15章の時点では、神の約束の子はおろか、イシュマエルさえまだ生まれてはいませんでした。そんな中で神は「あなたの子孫は天の星のようになる」と言われたのです。そしてその「神のことば」を信じたがゆえに、アブラハムは「義と認められた」のです。
信じるとは…?
現実からみことばの確かさを求めていくことではなく、みことばに立って現実を受け入れていくことです。
アブラハムが義と認められた信仰の内容は、当然教会時代を生きる私たちに啓示されている内容とは違います。しかし、神が義と認める経緯は、いつの時代も「恵みにより、信仰によって」です。どの時代であっても、行ないによって義と認められるわけではありません。
そして、アブラハム契約にサイン(封印)がなされますー創世記15:9~17
古代中東の契約にはいくつかの種類がありました。①手による契約、②靴による契約、③塩による契約、④血による契約です。
中でも『血による契約』は、最も厳粛なものでした。
創世記15:8ー土地の所有を約束されたアブラムは「それが私の所有であることを、どのようにして知ることができましょうか」と主に尋ねました。
創世記15:9~11ー神がアブラムに命じられたのは、血による契約の準備でした。
契約を確証するために、いけにえの動物を裂き、契約の当時者双方がその間を通りました。
それは契約を破った場合には、裂かれたものと同じ状態になるということを承認するという意味でした。
アブラムは命じられたとおり、雌牛、雌やぎ、雄羊、山鳩とそのひなを全部持って来て、鳥以外を真二つに切り裂き、互いに向かい合わせにし、猛禽を追い払って神の契約の時を待ちました。すでに高齢になっていたアブラハムにとって、これはかなりの重労働だったことでしょう。
創世記15:12ー日が沈みかかったころ、深い眠りがアブラムを襲いました。そして見よ。ひどい暗黒の恐怖が彼を襲った。
これは意識はあるけれど、肉体は眠った状態を指します。その状態でアブラムに仰せがありました。
創世記15:13ーイスラエルの民が400年間、エジプトで奴隷生活をすることの預言。
創世記15:14ーさばき…出エジプト時の十の災い。出エジプト7:1~12:33
多くの財産を持って…出エジプト記12:32, 35
アブラム自身は長寿を全うすることが約束されました。
創世記15:16ーそして400年もの間エジプトで奴隷生活を強いられたとしても、必ず神が約束された地に戻ってくると約束されました。
この約束が成就するのが『千年王国』なのです。
創世記15:17ー煙の立つかまど…土製の簡易かまど。火つぼのような物。
「煙の立つかまど」も「燃えているたいまつ」も共に、神が人間の目に見える形=シャカイナ・グローリー(神の栄光)で裂かれた動物の間を通られました。
しかし通られたのは神だけで、アブラムは深い眠りの中でした。
これが『片務契約』と言われる理由です。アブラハムは裂かれた動物の間を通っていないので、何の責任も負ってはいないのです。神だけが『血によるアブラハム契約』を結ばれ、全責任を負うことになりました。
以後、アブラムがどれほどの罪を犯したとしても、この契約が破棄されることはありません。それは神が聖であり、忠実、真実な方だからです。
クリスチャンとは、その神を信じる者たちです。
創世記15:18ー与えられる土地の境界線が示されました。南はエジプトの川から、北はあの大川、ユーフラテス川までです。
*今日に至るまでこの範囲(ユーフラテス川〜ナイル川まで)を所有していません。最終的にイスラエル人がこの境界線まで土地を所有するのは、メシア的王国(ユダヤ人の呼び方)千年王国(異邦人の呼び方)です。
⑤創世記17:1~21ー命令(17:10)…アブラハム契約のしるしとしての「割礼」を受けなさい。
いつ受けるか(17:12)…生後八日目。
*「割礼」とは…?
ヘブル語で「切り取る」を意味し、男子の陰茎の皮膚の一部を切り取る外科的手術のこと。生後八日目に受けるのは、新生児の免疫力が一番高まる時だからです。トイレで用をたす度に、そのしるしを見て神の「契約」と、約束の民であること(異邦人との分離)を思い起こさせるものでした。
⑥創世記22:15~18ーイサク奉献の後に、
a) あなたを大いに祝福する…個人的祝福の約束。
b) あなたの子孫を数多く増し加える…子孫繁栄の約束。
c) あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受ける…異邦人の祝福。
が、約束されました。
これら6カ所に記されている条項のキーワードは三つ、「子孫・土地・祝福」です。ユダヤ人はこの三つの条項すべてを、異邦人信者である私たちは信仰により神の子どもとして迎え入れられたために、『祝福』の条項に与る者となったのです。
そのことを覚え、常に謙遜でいたいものですね。
繰り返しになりますが、この契約は血による契約であり、無条件の「片務契約」です。ですから、破棄されることはありません。
*アブラハムによって地上のすべての民族は祝福されます。アブラハムの選びは手段としての選びです。「すべての民族の祝福」の中には異邦人の救いも含まれます。
(手段としての選び…例えるならば、新学期の新しいクラスで手紙を配るときに、たまたま出席番号の最初の二人に配付物をクラスに配るように先生が生徒に頼むようなものです。先生…キリスト、配付物…福音、出席番号の最初の二人…ユダヤ人、クラスメーと…異邦人だと考えたら分かりやすいかもしれません。)
〜三つの条項〜
⑴土地…後にイスラエルの民と結ばれる「土地の契約」によって再確認されます。
*創世記12:7でアブラハムにカナンの地の所有権が約束されていますが、生前 彼が所有したのは、妻サラを葬るために高額で購入したマクペラの墓だけでした。
⑵子孫…後にヤコブの12人の息子の一人、ユダの子孫として誕生するダビデと結ばれる「ダビデ契約」によって、発展していきます。
*「ダビデの王座が永遠に確立される」というダビデ契約を、無条件契約として認めるか否かで、その人の終末論が決まってくる重要な契約です。
⑶祝福…後にイスラエルの二つの家(ユダとイスラエル)と結ばれる「新しい契約」として発展します。エレミヤ31:31。
*『新しい契約』は、教会とではなく、神がイスラエルと結んだ最後の契約であり、とこしえの契約です。
この契約をどう理解するかにより、終末論が変わってくるほどの大事な契約です。
アブラハムまたその子孫が神に忠実であれば、祝福を受けます。不忠実になれば、神の裁きがくだります。(アッシリヤ&バビロン捕囚など)
しかしこの契約が約束していることは、必ず成就するのです。アーメン。
神が約束されたメシアは、女の子孫→ノアの息子セムの家系→アルパクシャデの家系→アブラハム→イサク→ヤコブ→ユダの家系→ダビデの家系→マリヤから誕生した『イエス』です。
イエスの初臨以降は、この『イエス』をメシアとして信じなくては、ユダヤ人であっても救いには至りません。
また、『モーセ契約=律法』から除外されていた私たち異邦人は、メシアを信じる信仰により『神の子ども』して迎え入れられます。
ヨハネ1:12, ローマ9:6~8
私たちは信仰により『神の子ども』として、『アブラハム契約』の祝福に与る者となったのです。
聞かされたこと、読んだ事柄をただ鵜呑みにするのではなく、聖書のみことばで確認し(使徒17:11)、御霊の導きによって確信したところに留まれますように(Ⅱテモテ3:14)。みことばに堅く立てますように。アーメン。