ダニエル2:1ーネブカデネザルの治世の第2年…バビロンの習慣では、王位に就いた最初の年は数えないので、実際には3年目に当たります。
ダニエルたちは3年間の教育を受けることになっていたので、丁度その教育期間が終わって間もなくの頃と思われます。
夢…この当時、神様は夢を通して人間に語りかけると考えられていました。
ネブカデネザル王もいくつかの夢を見て、心が騒ぎ、眠れなくなりました。今風に言えば、夢見が悪かったのでしょう。
ダニエル2:2ー呪法師…バビロンの聖典に通じた学者たちのこと。
呪文師…占星術を使って未来を占う者たちのこと。「東方の博士たち」というのは、このグループの人たちです。cf マタイ2:1~12。
呪術者…一般的に「魔術師」と呼ばれる者たちのこと。
カルデヤ人…混血ではなく、純粋なカルデヤ人の賢者たちのこと。
これらの賢人たちに、ネブカデネザル王は夢の解き証しを求めたのです。
ダニエル2:3ー心は騒いでいる…よほど強烈な夢を見たのでしょう。ネブカデネザル王はすっかり平安を失ってしまっているようです。
ダニエル2:4ーカルデヤ人…2節のバビロンの賢者たちの総称。
アラム語…もともとは、メソポタミヤ北部とシリヤ(アラム)地方の言葉。
*ダニエル書2:4〜7:28は、アラム語で書かれています。
王に招集されたバビロンの賢人たちは、「どうぞその夢をしもべたちにお話しください。そうすれば、私たちはその解き明かしをいたしましょう。」と答えています。
もちろん、普通はそうですよね?! 見た夢の内容を知らなければ、解き明かしなんかできませんから。
ダニエル2:5ーところが、ネブカデネザル王は夢の解き明かしだけではなく、王が見た夢そのものをも解き明かすように求めました。よほどその夢に怯えていたのでしょう。
王はそれができないのなら、「あなたがたの手足を切り離させ、あなたがたの家を滅ぼしてごみの山とする。」と横柄なことを言っています。
ダニエル2:6ーしかし、夢とその解き明かしの両方を知らせることができたなら、多大な報酬も約束しています。大きな報いか、死か…賢人たちもびっくりしたことでしょう。
私たちが信じる王なるイエスは、ネブカデネザル王とは違い、こんな難しいことは要求されません。
ご自分を「救い主」として信じるだけで、神の子、御国の民としてくださるという大きな報いをくださいます。信じることだけすらしないという選択をした者にのみ、「第2の死」である火の池という永遠の住まいを与えられるのです。
ダニエル2:7ーバビロンの賢人たちも必死です! 「王よ。しもべたちにその夢をお話しください。そうすれば、解き明かしてごらんにいれます。」と食い下がっています。
ダニエル2:8ー王は以前、賢人たちの解き明かしが外れるという経験でもあったのかしら?と思うほど、疑ってますよね?! 多大な報酬か死か…二者択一を迫ったことに変わりはないことを知り、時間稼ぎをしているだけだ!とまで言っています。
ダニエル2:9ー王が見た夢の内容を賢人たちが話せないのなら、判決は「死」だと宣言しています。
王は初めからバビロンの賢人たちを信用してはいないようですね。「偽りと欺きのことばを私の前に述べようと決めてかかっている。」
ネブカデネザル王は、彼ら「賢人」とされる人々が夢の内容を王に話すことができたなら、その解き明かしも本当だと信じることが出来ると言っています。
ダニエル2:10ーバビロンの賢人たちは、夢の解き明かすふりをすることはできても、王の夢そのものを言い当てることはできませんでした。
ダニエル2:11ー神々…バビロンは像崇拝の中心地だったので、複数形になっているのです。日本も「八百屋の神」の国ですから、ある意味、バビロンと同じですね。本物の創造主なる神を伝える責任が、クリスチャンにはあるのです。
バビロンの賢人たちは、王の見た夢まで解き明かせるのは、人間には無理なことであると答えました。
確かにそうです。と同時に、偶像の神々にも無理なのです。それができるのは、まことの神様だけです。アーメン。
ダニエル2:12ー王はよほどこの夢を恐れていたのでしょう。そして、賢人たちをもってしても、夢の解き明かしが出来ないと知ると怒り狂って「バビロンの知者をすべて滅ぼせ!」と命じました。
cf 箴言19:12aー王の激しい怒りは若い獅子がうなるよう。
ダニエル2:13ーこの場に収集されていたのは、バビロンの賢人たちであり、南ユダ王国から捕囚の民として連れて来られたダニエルたちはいませんでした。しかし、この命令が発せられたことにより、「知者たち」の中にダニエルとその同僚たちも含まれることとなりました。
ダニエル2:14ーダニエルのもとにやって来たのは、王の侍従長アルヨクでした。目的はもちろん、バビロンの知者たちを殺すためです。彼が訪ねて来た時、ダニエルは知恵と思慮とをもって応待しています。
cf 箴言15:1ー柔らかな答えは憤りを静める。
しかし激しいことばは怒りを引き起こす。
ダニエル2:15ーネブカデネザル王とは対照的に、ダニエルは落ち着いて、冷静に対応しました。
「どうしてそんなにきびしい命令が王から出たのでしょうか。」
柔らかな舌は、骨を砕く。
いかに相手が怒っていても、冷静に対応すれば、相手も落ち着きを取り戻します。ダニエルの冷静な対応に、侍従長アルヨクは事の次第を教えてくれました。
ダニエル2:16ーしばらくの時…ダニエルが「しばらくの時」を与えてくれるように願ったのは、王のところに行き、夢の解き明かしをするためですが、そのためには「真の神」に祈りを捧げる時間を持つことが必要でした。
ダニエル2:17ーダニエルは許可を得るとすぐ行動に移りました。自宅に戻り、同僚のハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤにこの事を知らせたのです。
ダニエル書1:7では、彼ら四人にバビロンの名前が付けられています。また2:4~7章の終わりまでは、アラム語で書かれているのにも関わらず、ここでは元のヘブル名で4人の名前が書かれています。それは、彼らが偶像の神々に仕える者たちではなく、イスラエルの神に仕える者たちであることを表わしているからです。
ダニエル2:18ーこの秘密…ネブカデネザル王が見た夢とその解き明かし。
天の神…神様の超越性を強調した表現。捕囚期と捕囚以降、一般的に使われるようになりました。
彼らは「天の神」のあわれみを請うています。四人で心を合わせて祈っているのです。
八方塞がりに見えても、常に上は空いており、そこから神の御手が伸ばされているのです。
試練の時には、意気消沈して下を向き、涙することが多い私たちですが、その時こそ信仰により顔を上げて、助け主なる主の御手にすがりましょう。必ず主は助けてくださいます。
cf Ⅱコリント4:8~9ー私たちは、四方八方から苦しめられますが、窮することはありません。途方にくれていますが、行きづまることはありません。
迫害されていますが、見捨てられることはありません。倒されますが、滅びません。
ダニエル2:19ー夜の幻…「夢」は眠っている時に見るものですが、「幻」は起きている時に示されるもので、より鮮明です。
神はダニエルたち四人の祈りに答えてくださり、夜の幻によりダニエルに王の夢とその意味をはっきりと示してくださいました。そこで、ダニエルは「天の神」をほめたたえています。
私たちも祈りがきかれた時、祈りっぱなしにするのではなく、神をほめたたえ、感謝の祈りを忘れないようにしましょう。
ダニエル2:20ー神様からの啓示が与えられたダニエルは、すぐに「天の神」を全知全能なる神としてほめたたえています。
cf 1歴代誌29:11ー主よ。偉大さと力と栄えと栄光と尊厳とはあなたのものです。天にあるものも地にあるものはみなそうです。主よ。王国もあなたのものです。あなたはすべてのものの上に、かしらとしてあがむべき方です。
詩篇113:1~2ーハレルヤ。油のしもべたちよ。ほめたたえよ。
主の御名をほめたたえよ。
今よりとこしえまで。
主の御名はほめられよ。
ダニエル2:21ーダニエルは、神が主権者であり、歴史を支配しておられる方であることを覚えて、賛美しています。
cf 1歴代誌29:12ー富と誉れは御前から出ます。あなたはすべてのものの支配者であられ、御手には勢いと力があり、あなたの御手によって、すべてが偉大にされ、力づけられるのです。
詩篇31:15ー私の時は御手の中にあります。
私を敵の手から、また追い迫る者の手から救い出してください。
ダニエル2:22ーダニエルは、神が啓示の神であることを賛美しています。
cf ヨブ記12:22ーやみの中から秘密をあらわし、暗黒を光に引き出す。
詩篇139:12ーあなたにとっては、やみも暗くなく、
夜は昼のように明るいのです。
暗やみも光も同じことです。
ダニエル2:23ーダニエルは、先祖の神に感謝しています。
私の先祖の神…アブラハム、イサク、ヤコブの神のこと。
感謝の理由は二つ、過去の恵みと現在の恵みです。
私たちがあなたにこい願ったこと…ネブカデネザル王の見た夢とその解き明かしを祈ったのは、ダニエルたち四人でした。
私に知らせ…その願いを明らかに示されたのは、ダニエル一人だけでした。
王のことを私たちに知らせてくださいました…ダニエルを通して他の三人もその内容を知るようになりました。
ダニエル2:24ー神様を賛美し終えると、ダニエルはすぐに王の侍従長アルヨクのもとへ行きました。
ぐずぐずしていたら、バビロン中の知者たちが滅ぼされてしまうのです。
ダニエルはアルヨクに、王の前に連れて行ってくれるようにと頼みました。
ダニエル2:25ーアルヨクが急いでダニエルを王の前に連れて行っていることから、彼もバビロンの賢人たちが殺されることを願っていなかったと思われます。しかしアルヨクの言葉からは、ダニエルを見つけた事を自分の手柄にしようとしていることも伺えます。
ダニエル2:26ーダニエルのことを「ベルテシャツァル」とバビロン名で書かれています。バビロンの賢人たちを信用していなかった王は、ダニエルに対してもあまり信用していないような発言をしています。
落ち着いて考えれば、命令そのものが人間には無理だということくらい、王だってわかりますよね?!
それを「解き明かしができる」と言われたので、まさか!?と思ったのかもしれません。
ダニエル2:27ーダニエルは、王の命令はいかにバビロンの賢人たちといえども、人間にはできないことだと答えています。
ダニエル2:28ーこの秘密を解き明かすことのできるお方は、ただひとり「天の神」のみであり、王が見た夢は「終わりの日」に起こる事を示したものだとダニエルは言っています。
終わりの日…「終末時代」を指す預言的なことば。
ダニエル2:29ーダニエルは、いよいよ王の見た夢の解き明かしにかかります。
王は寝床で、これから後に起こる事について思い巡らせていた、と眠る前の状態から言い当てています。そして、それに神が答えてくださったのだと。
ダニエル2:30ーダニエルはとても謙遜に、自分に知恵があったからではなく、夢の解き明かしが王に知らされることにより、王自身が心の思いを知ることになるためだと語っています。
メシア的王国(千年王国)が成就する前に、歴史がどう動いて行くのかを、神が事前に王の夢を通して啓示されたということです。
神は現代を生きる私たちには、夢ではなく「新約聖書」(特にヨハネの黙示録)を通して、この先歴史がどのように動いて行くのかを示してくださっています。黙示録は旧約聖書に預言されている終末時代に関する預言を、時系列にまとめたものです。
cf 1コリント2:9ー目が見たことのないもの、耳が聞いたことのないもの、そして人の心に思い浮かんだことのないもの。神を愛する者のために、神の備えてくださったものは、みなそうである。
ダニエル2:31ーダニエルは、王の見た夢を言い当てました。それは巨大な像で、世界の歴史を象徴する役割を担っていました。
ダニエル2:32ー①頭…純金。②胸と両腕…銀。③腹ともも…青銅。
ダニエル2:33ー④すね…鉄。⑤足…一部が鉄、一部が粘土。
これらの各部分は、帝国の興亡となっていました。
〜金属の価値と強度に注目!〜
【金属の価値】
純金の頭…バビロン帝国を指します。バビロンでは、王の権威は法以上のものと見なされていました。
銀の胸と両腕…メド・ペルシャ連合帝国を指します。王の権威は、法の下にありました。
【金属の強度】
純金〜鉄と下にいくほど、強度が上がっています。これはその帝国の軍事力を表わします。(足の一部の粘土だけは例外)
ダニエル2:34ー人手によらずに切り出された…神から送られた「石」であるという意味。
その石が、その像の足の一番弱い鉄と粘土が混じった部分を打ち砕きました。
ダニエル2:35ーその結果、像は頭から足まで完全に破壊され、跡形もなくなります。それとは対照的に、その石は大きな山となって、全土に満ちました。
*人手によらないこの「石」は、メシアを表わします。その石が、大きな山となり、全土に満ちるということは、メシア的王国が全土に広がるということです。
ダニエル2:36ー私たち…これはダニエルだけでなく、ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤも含んでいます。この三人は、夢の解き明かしのために、ダニエルと共に祈った仲間です。
*ネブカデネザル王が見た夢は「異邦人の時ー異邦人の帝国がユダヤ人たちを支配する時代のことで、BC586年 バビロン捕囚〜患難時代の最後に起こるメシアの地上再臨までー」の間に、どういう帝国が世界を支配するかを預言したものです。
ダニエル2:38ー〜最初の三つの帝国〜
①純金の頭…バビロン帝国を象徴。その王が、ネブカデネザル。
cf エレミヤ27:5~8、エゼキエル26:7~14。
ダニエル2:39ー②銀の胸と両腕…メド・ペルシャの連合帝国を象徴。その権威と支配力において、バビロン帝国よりも劣っていました。
この時のペルシャの王が、旧約聖書の中で異邦人で唯一 油注がれたクロス王です。cf イザヤ書45:1
彼は、バビロン捕囚となっていたユダの民を解放し、イスラエルに帰還させ、エルサレムの都と神殿の再建を命じました。
③青銅の腹ともも…アレクサンドロス大王率いるギリシャ帝国を象徴。
*ダニエルが解き明かした「異邦人の時」に関する預言がそのまま成就しているなら、これから来るとされる「メシア的王国」もそのまま成就すると信じられるはずです。
ダニエル2:40ー第四の国…一般的には「ローマ帝国」だと言われていますが、三つの段階を通過するので、ローマ帝国と言えるのは第一段階だけです。(詳細は7章でのお楽しみ♡)
第一段階ー統一王国…純粋に「ローマ帝国」と言えるのはこの段階だけ。
第二段階ー二国に分裂した帝国(足は二本あるからね)…霊的には西側=西方教会、東側=東方教会。
第三段階ー十国に分裂した帝国。鉄(強いもの)と粘土(弱いもの)とが混じり合った足の指の状態。
十の王国は、世界統一政府の下にある。
患難時代後半の3年半は、反キリストの『獣の国』となります。
ダニエル2:44ー「異邦人の時」の終わりに、『第五の帝国』が現われます。
人手によらずに切り出される石が、巨大な像を打ち砕きます。つまり、異邦人の帝国をすべて打ち砕きます。
山…権威、王権、王国などを象徴した言葉。メシア的王国を象徴。
*「石」や「岩」という言葉が象徴的に用いられた場合は、メシアを指します。
cf 詩篇118:22、イザヤ8:14、28:16、ゼカリヤ3:9、マタイ21:44、使徒4:11、1コリント10:4、1ペテロ2:4~8。
ダニエル2:45ーメシア的王国が起こるという王が見た夢は正夢であり、その解き明かしも確かだとダニエルは言っています。
ダニエル2:46ーネブカデネザル王は、ダニエルの前にひれ伏していますが、ダニエルを礼拝しているのではありません。偶像崇拝のバビロン風のやり方でダニエルが信じるイスラエルの神を敬ったということです。
ダニエル2:47ー神々の神…バビロンの神々の中で、最上位に位置する神だということです。
私たちも「主イエスを神の子、キリストと信じます。」と言いながらも、日本の神々の中の最高位に据えただけの信仰になっていないか、自分の信仰を吟味してみましょう。
王たちの主…王の王であるということ。
秘密をあらわす方…王が秘めていた夢の内容とその解き明かしをしたため。
*このような発言をしたからと言って、ネブカデネザル王が救いに至る信仰を持ったということにはなりません。バビロンの多神教の神々の中にもう一つの神として、イスラエルの神を加えたということです。
ダニエル2:48ーダニエルが受けた報いは、高い位に就けられ、多くの贈り物が与えられ裕福になりました。そして、バビロン帝国の首都があるバビロン州の知事役に就くことになり、すべての賢人たちを管理指導することになったのです。
このことは、後に捕囚として連れて来られるユダヤ人たちにとって、同邦による指導には従い易いという面と、反乱を起こすと同邦のダニエルたちの命が危険にさらされるという面がありました。
ダニエル2:49ーダニエルは、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴ(いずれもバビロン名)をバビロン州の事務をつかさどらせる職に就け、自分自身は宮廷に留まりました。
ダニエルが宮廷に留まることにより、王と直接意志疎通をできる立場にいることになるわけです。