サザエのお裾分け

聖書を字義通り&文脈に沿って学び、理解したことの中からのお裾分け。内容は鵜呑みにせず、必ずご自分で聖書を開いて確認してくださいね。聖書理解の助けになれば幸いです。† 栄光在主 †

ダニエル書 5章

ダニエル書には、BC586年のバビロン捕囚から始まった『異邦人の時』ー異邦人の帝国がユダヤ人たちを支配する時代ーの間に起こる帝国の興亡を預言するという目的があります。

 

ダニエル5:1ーダニエル書4章と5章の間には、23年という歳月が経過しており、5章の時点では、時はBC539年の出来事です。

ネブカデネザル王は既にこの世を去り、孫にあたるベルシャツァルが王位に就いていました。

 

ベルシャツァルが千人もの人々を招いて大宴会を催したのは、バビロン帝国崩壊のまさに「その夜」でした。それは聖書だけでなく古代歴史家たちもそれを証言しています。

千人の前でぶどう酒を飲んでいた…バビロンの偶像を礼拝していた、という意味です。

 

ダニエル5:2ー父ネブカデネザル…「父と息子」という関係ではなく、ベルシャツァルがネブカデネザルの子孫であることを示しているだけです。

ベルシャツァル…「ベル(バビロンの偶像神)よ。王を守りたまえ。」の意。ネブカデネザル王の娘とナボニドスとの間に誕生した。つまりネブカデネザル王は、母方の祖父にあたる。

 

ダニエル5:2~4ーベルシャツァルは祖父ネブカデネザルがエルサレムの神殿から奪って来た金や銀の器を持ってくるように命じ、それらの聖なる器を偶像礼拝に用いました。

 

ダニエル5:5ーすると突然…ベルシャツァルがイスラエルの神を冒瀆しながら、宴会を楽しんでいた『その時』ということ。

人間の手の指が現われ、壁に何かを書き始めました。

 

文字が書かれたのは『燭台の向こう側』、つまり部屋の一番明るい場所です。この時の宴会場が発掘されています。19m x 52m の広さで、壁はしっくいで仕上げた『白壁』でした。そこに書かれた文字は、誰もが見ることができたでしょう。

 

ダニエル5:6ーそれを見た王は恐怖に襲われ、ぶどう酒で赤くなっていたであろう顔は青ざめ、腰の関節はゆるみ、膝はガタガタ震えました。

 

ダニエル5:7ーこの国の習慣に基づき、知者たちが呼び集められました。ベルシャツァルは「文字の解き明かしが出来た者には、この国の第三の権力を持たせよう。」と約束しています。

父ナボニドスが第一の権力者、ベルシャツァルが第二の権力者であったため「第三の権力」ということです。

 

ダニエル5:8ーしかしネブカデネザル王の夢の解き明かしの時と同じように、バビロンの知者たちは無力でした。

 

ダニエル5:9ーたとえ「第三の権力」を約束されても、国中の知者たちが集められても、だれも解き明かしができなかったので、ベルシャツァルはひどく怯え、その場にいた貴婦人たちは途方にくれてしまいました。

 

ダニエル5:10ー宴席が混乱していることを聞いた王母ニトクリス(ネブカデネザルの娘で、ベルシャツァルの母)が、広間に入って来ました。そして息子であるベルシャツァル王を励ましました。

 

ダニエル5:11ー王母はベルシャツァルにダニエルを推薦しました。

当時ダニエルは80歳前後で、政府の要職からは引退していたようです。王の世代交代もあり、忘れられた存在であったようです。それをネブカデネザルの娘である王母が思い出したのでしょう。

王母はダニエルのことを賛辞とともに紹介しています。

 

ダニエル5:12ーネブカデネザル王が彼を評価し、バビロンの知者たちの長の位に就けたと、その功績を讃えた上で、ダニエルを召し壁に書かれた文字の解き明かしをするように勧めています。

 

ダニエル5:13~16ーダニエルはベルシャツァル王の前に連れて来られました。王は事のなりゆきを説明した上で、「もし文字の解き明かしができたなら、あなたに紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけさせ、国の第三の権力を持たせよう。」と約束しました。

 

ダニエル5:17ーしかしダニエルの答えは「自分は王からの報酬のために解き明かしをするのではないと、王が用意した報酬を断りました。その上で、解き明かしはすると答えています。

 

ダニエル5:18ーダニエルは、イスラエルの預言者たちに共通した言い回しで、王の態度について語っています。

神はネブカデネザル王に「国と偉大さと光栄と権威」をお与えになりました。

 

ダニエル5:19ーそれゆえネブカデネザル王は、地の諸国王に対して権威を及ぼすことができた。

 

ダニエル5:20ーそしてネブカデネザル王の心は高ぶり、高慢になりました。その結果、彼は王座から退けられました。

cf 箴言18:9ー人の心の高慢は破滅に先立ち、謙遜は栄誉に先立つ。

 

ダニエル5:21ー彼は獣化妄想に陥り、人の中から追い出され、外で牛のように草を食べました。

七年間のこの裁きを通して彼は砕かれ、イスラエルの神こそ主権者であり、思いのままに国を興し、王を建てるお方であることを知るようになりました。

 

ダニエル5:22ーしかし、その子孫であるベルシャツァルは『これらのことをすべて知っていながら』傲慢の罪を犯しました。ネブカデネザルとベルシャツァルとの違いは、ネブカデネザルは無知のゆえに罪を犯しましたが、ベルシャツァルの場合は意図的に神に挑戦したのです。

 

このことから、信仰は『親がクリスチャンなら子供も自動的に信仰を持つ』というようなものではなく、あくまでも『神対個人』の関係であることがわかります。親が信者であるなら、幼い頃から神様とともに生きることの祝福や何を信じるのかという情報など、恵まれた環境の中に置かれていることは確かです。

 

しかしだからと言って、子供も自動的に神を信じる者になるというものではありません。その人自身がどう神と向き合うかが問題です。神との正しい関係を壊すのが『罪』ですから、常に心を神に向け、罪に対し敏感に、且つ早めに対処できるように、日々みことばと祈りによって導かれる必要があるのです。

 

ダニエル5:23ーベルシャツァルは銀、金、青銅、鉄、木、石の神々を賛美しましたが、真の神(あなたの息とあなたのすべての道をその手に握っておられる神)を敬うことはしませんでした。

 

ダニエル5:24ーそのために神からの裁きがくだったのです。この壁の文字は、神の判決文です。

cf 詩篇53:1愚か者は心の中で「神はいない」と言っている。彼らは腐っており、忌まわしい不正を行なっている。善を行なう者はいない。

 

ダニエル5:25ーメネ、メネ、テケル、ウ・パルシン…これらの単語はすべてアラム語の重量の単位です。

メネ…へブル語:ミナ。テケル…へブル語:シェケル。ペレス(複数形:パルシン)…へブル語:半シェケル

 

そこにいた人々は、それらの文字が重量の単位であることは理解しましたが、その意味についての解説を必要としていました。まるで現代のクリスチャンのようですね。日本語版聖書を読んではいても、その意味を理解するにはダニエルのようなユダヤ人の解説を必要とするところに共通点がある気がします。

 

ダニエル5:26ーダニエルの解き明かし。

メネ(へブル語:ミナ)を動詞として理解すると、二つの意味が出て来ます。「

数えた」と「定めた」です。つまり『神がベルシャツァル王の治世の年数を数え、それを終わらせた』ということです。

 

ダニエル5:27テケル(へブル語:シェケルも動詞として理解すると「量られた」という意味になり、『あなたがはかりで量られ、目方の足りないことがわかった』ということになります。

 

ダニエル5:28ーウ…接続詞。

ペレス(複数形:パルシン)を動詞として理解すると「分割する」という意味になり、『国が分断され、メディヤとペルシャに与えられる』という意味になります。

 

ダニエル5:29ー文字の解き明かしをしたダニエルに、王は約束通り報酬をあたえました。ダニエルはこの時、バビロンで「第三の権力者」となりました。バビロンはその夜 滅ぼされたので、彼がその地位にあったのはほんの数時間でした。

 

ダニエル5:30ーその夜、バビロンはメド・ペルシャの連合軍による夜襲を受けて崩壊し、ベルシャツァル王は殺されました。

 

ダニエル5:31ーメディヤ人ダリヨス…このダリヨスはペルシャのクロス王の叔父に当たるキュアクサレスⅡ世です。後に登場するペルシャ人ダリヨスと区別するために『メディヤ人ダリヨス』となっています。

 

このダリヨスは新帝国を統治するために、それまでのしきたりや制度を変えずにそのまま受け継ぐやり方を用いました。この時、そのほんの数時間前にバビロンの『第三の権力者』となったダニエルが、三大臣のひとりに任命されることになったのです。

 

ダニエルの影響力は次の王であるペルシャのクロス王にまで及び、それがユダヤ人の祖国帰還の勅令へとつながっていくのです。ここに神様の摂理があります。と同時に預言の成就にもなっているのです。

 

イザヤ44:28ーわたしはクロスに向かっては、『わたしの牧者、

わたしの望む事をみな成し遂げる。』と言う。

エルサレムに向かっては、

『再建される。

神殿は、その基が据えられる。』と言う。」

 

イザヤ45:1ー主は、油そそがれた者クロスに、

こう仰せられた。

「わたしは彼の右手を握り、

彼の前に諸国を下らせ、

王たちの腰の帯を解き、

彼の前にとびらを開いて、

その門を閉じさせないようにする。

 

このように神は預言者イザヤを通して、クロス王が登場する100年以上も前に将来起こる、クロス王の出現、バビロン帝国の崩壊、エルサレムの再建などを預言されました。

 

イザヤ44:28「わたしの牧者」と呼ばれたクロス王が、イザヤ45:1「油そそがれた者」と呼ばれています。このことばは『メシア』をいうことばと同じ語源から来ています。そのようなことばを持って異邦人が呼ばれることは、極めて異例です。

 

それだけクロス王の使命は重要だったのです。神がクロス王を祝福し、シリヤ、アッシリヤ、アラビヤ、カパドキヤ、フルギヤ、ルデヤ、カリヤ、フェニキヤ、バビロンなど、あらゆる敵に打ち勝つ力をお与えになりました。

 

それは、神がクロス王をイスラエルの民を解放するための器として用いるためでした。

 
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