創世記38:1ーそのころのことであった。ユダは兄弟たちから離れて下って行き、その名をヒラというアドラム人の近くで天幕を張った。
そのころ…ヨセフが野の獣に襲われたと見せかけ、(37:36)あのミデヤン人はエジプトで、パロの廷臣、その侍従長ポティファルにヨセフを売った頃。
ミデヤン人…アブラハムと後妻ケトラとの間に生まれたの子の子孫。
創世記25:1~2ーアブラハムは、もうひとりの妻をめとった。その名はケトラといった。
彼女は彼に、ジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデヤン、イシュバク、シュアハを産んだ。
アドラム人…エルサレム南西に住む民。
創世記38:2ーそこでユダは、あるカナン人で、その名をシュアという人の娘を見そめ、彼女をめとって彼女のところに入った。
父ヤコブと他の兄弟たちから離れ、ユダは『カナン人シュアの娘』と結婚した。
創世記38:3~5ー彼女はみごもり、男の子を産んだ。彼はその子をエルと名づけた。彼女はまたみごもって、男の子を産み、その子をオナンと名づけた。彼女はさらにまた男の子を産み、その子をシェラと名づけた。彼女がシェラを産んだとき、彼はケジブにいた。
ここから先はレビラート婚と関係があります。
【レビラート婚】
申命記25:5~6ー兄弟がいっしょに住んでいて、そのうちのひとりが死に、彼に子がない場合、死んだ者の妻は、家族以外のよそ者にとついではならない。その夫の兄弟がその女のところに、入り、これをめとって妻とし、夫の兄弟としての義務を果たさなければならない。
そして彼女が産む初めの男の子に、死んだ兄弟の名を継がせ、その名がイスラエルから消し去られないようにしなければならない。
*まだ『モーセの律法』は与えられてはいない時代ではあるが、この風習は既にあったものと思われます。
ユダには、エル、オナン、シェラという三人の息子が与えられました。
創世記38:6~7ーユダは、その長子エルにタマルという妻を迎えた。
しかしユダの長子エルは主を怒らせていたので、主は彼を殺した。
*長男エルが何故主を怒らせたのか、聖書は明記してはいない。
嫁のタマルを気に入らなかったのか、もしくは結婚関係において罪を犯していたのかもしれない。
わかることは、エルの罪のゆえに主を怒らせ、主が彼を殺されたということ。
創世記38:8ーそれでユダはオナンに言った。「あなたは兄嫁のところに入り、義弟としての務めを果たしなさい。そしてあなたの兄のために子孫を起こすようにしなさい。」
レビラート婚と同じ事をユダはオナンに命じました。
民数記27:8~10ーあなたはイスラエル人に告げて言わなければならない。人が死に、その人に男の子がないときは、あなたがたはその相続地を娘に渡しなさい。もし娘もないときには、その相続地を彼の兄弟たちに与えなさい。もし兄弟たちもいないときには、その相続地を彼の父の兄弟たちに与えなさい。
エルの兄弟として、このような義務があったのにも関わらず、オナンは…
創世記38:9ーしかしオナンは、その生まれる子が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないために、兄嫁のところに入ると、地に流していた。
*これが自慰行為『オナニー』の語源となりました。
多くのクリスチャンは聖書の中の恵みや愛、慰めや励ましなど美しい部分を好みますが、聖書はどんなに偉い人物であっても、ドロドロした罪の部分を明らかにしています。人間である以上、罪を避けて通ることは出来ません。この後ダビデ王やイエス様の家系となるユダの罪も明らかにされていくのです。
創世記38:10ー彼のしたことは主を怒らせたので、主は彼をも殺した。
*ユダの次男オナンのしたことは、神と人とを欺くものだったのです。
また、次にユダがなすべきは、三男シェラをタマルと結婚させることでしたが…
創世記38:11ーそこでユダは、嫁のタマルに、「わが子シェラが成人するまで、あなたの父の家でやもめのままでいなさい」と言った。それはシェラもまた、兄たちのように死ぬといけないと思ったからである。タマルは父の家に行き、そこに住むようになった。
ユダは父としての責任を先延ばしにしたのです。
創世記38:12ーかなり日がたって、シュアの娘であったユダの妻が死んだ。その喪が明けたとき、ユダは、羊の群れの毛を切るために、その友人でアドラム人のヒラといっしょに、ティムナへ上って行った。
*かなり日がたって…14節に『シェラが成人した』とあるので何年か経っていたのでしょう。
創世記38:13ーそのとき、タマルに、「ご覧。あなたのしゅうとが羊の毛を切るためにティムナに上って来ていますよ」と告げる者があった。
*実家に帰り、ユダからシェラとの結婚の知らせが来るのを待っていたタマルに、姑ユダの行動を告げる者がありました。
創世記38:14ーそれでタマルは、やもめの服を脱ぎ、ベールをかぶり、着替えをして、ティムナへの道にあるエナイムの入口にすわっていた。それはシェラが成人したのに、自分がその妻にされないのを知っていたからである。
*タマルは、シェラとの結婚はないと感づいていたんですね。ここには『遊女』の装いだとは書いてありません。
ベールをしていたために、ユダがタマルだと気付かずに、遊女だと思ったのです。
創世記38:15~16ーユダは彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたので遊女だと思い、道ばたの彼女のところに行き、「さあ、あなたのところに入ろう」と言った。彼はその女が自分の嫁だとは知らなかったからである。彼女は、「私のところにお入りになれば、何を私に下さいますか」と言った。
*この時ユダは妻を亡くし、喪が明けたばかりでした。…創世記38:12
*あなたのところに入ろう…とは、性的関係を持つことを意味します。
妻を亡くし、結婚という契約関係から解放されており、息子な嫁タマルだとは知らなかったとはいえ、二人の行為は後に『罪』だとはっきり定められています。
レビ記20:12ー人がもし、息子の嫁と寝るなら、ふたりは必ず殺されなければならない。彼らは道ならぬことをした。その血の責任は彼らにある。
創世記38:17~18ー彼が、「群れの中から子やぎを送ろう」と言うと、彼女は、「それを送ってくださるまで、何かおしるしを下されば」と言った。
それで彼が、「しるしとして何をあげようか」と言うと、「あなたの印形とひもと、あなたが手にしている杖」と答えた。そこで彼はそれを与えて、彼女のところに入った。こうしてタマルは彼によってみごもった。
*たった一度の関係でも、その罪の結果はタマルの妊娠というものでした。
創世記38:19~20ー彼女は立ち去って、そのベールをはずし、またやもめの服を着た。
ユダは、彼女の手からしるしを取り戻そうと、アドラム人の友人に託して、子やぎを送ったが、彼はその女を見つけることができなかった。
*ユダは三男シェラとタマルの結婚を先延ばしにしていたこともあり、タマルは信用していなかったのでしょう。
売春の代金として子やぎが送られてくるまで、しるしとしてユダの身分証明として『印形とひもと杖』を預かっていました。それらを取り戻すべく、ユダは約束の子やぎを送ろうとしました。
創世記38:21ーその友人は、そこの人々に尋ねて、「エナイムの道ばたにいた遊女はどこにいますか」と言うと、彼らは、「ここには遊女はいたことがない」と答えた。
*タマルは遊女を職業にしていたのではなく、そこにユダが来ると知ってそこに居たので、その後はやもめとしての生活に戻っていました。
創世記38:22ーそれで彼はユダのところに帰って来て言った。「あの女は見つかりませんでした。あそこの人たちも、ここには遊女はいたことがない、と言いました。」
*ユダは自らの約束を『アドラム人の友人』に託していたことから、自分の罪が公になることを恐れていたのかもしれません。
創世記38:23ーユダは言った。「われわれが笑いぐさにならないために、あの女にそのまま取らせておこう。私はこのとおり、この子やぎを送ったのに、あなたがあの女を見つけなかったのだから。」
*ユダは悔い改めではなく、子やぎを送るという行為(努力)により、自分の正当性を主張しています。
創世記38:24ー約三か月して、ユダに、「あなたの嫁のタマルが売春をし、そのうえ、お聞きください、その売春によってみごもっているのです」と告げる者があった。そこでユダは言った。「あの女を引き出して、焼き殺せ。」
*約三か月…ちょうど悪阻が辛い時期。
*普段やもめとして暮らしているタマルが妊娠するということは、売春以外に考えられなかったのでしょう。
タマルの妊娠の事実を、おそらく疎遠になっていたであろうユダに告げる者がいました。本来なら、ユダにシェラとタマルの結婚を勧めるべきだったはずなのに…。
ここも責任転『嫁』かな…?
…にしても、ユダもひどいですよね。
「あの女を引き出して、焼き殺せ。」だなんて!! よほどシェラを与えたくなかったんでしょうね。
タマルと結婚した二人の息子がそれぞれの罪で死んだことも、ユダにしたら『息子の罪』というより、嫁のタマルが疫病神のように思えたのかもしれません…。
創世記38:25ー彼女が引き出されたとき、彼女はしゅうとのところに使いをやり、「これらの品々の持ち主によって、私はみごもったのです」と言わせた。そしてまた彼女は言った。「これらの印形とひもと杖とが、だれのものかをお調べください。」
*タマルのほうが一枚上手ですね。騙したことは秘密にしたまま、誰の子かだけを調べるように…と言っています。
創世記38:26ーユダはこれを見定めて言った。「あの女は私よりも正しい。私が彼女にわが子シェラを与えなかったことによるものだ。」それで彼は再び彼女を知ろうとはしなかった。
*自分の印形、ひも、杖という証拠を前に、やっとユダも自分の罪を認めた。
*彼は再び彼女を知ろうとしなかった…ユダは二度と嫁のタマルとの性的関係を持たなかった、の意。つまり、ユダはタマルと結婚しなかった、ということです。
またユダが悔い改めたことがわかりますが、シェラをタマルに与えたとは聖書は書いていません。
創世記38:27~28ー彼女の出産の時になると、なんと、ふたごがその胎内にいた。
出産のとき、一つの手が出て来たので、助産婦はそれをつかみ、その手に真っ赤な糸を結びつけて言った。「この子が最初に出て来たのです。」
*タマルはエルとオナンの二人に嫁いでいたことを考えると、ふたごが誕生したことも意味があるように思えます。また、どちらが先かを示すために『その手に真赤な糸を結びつけた』というのも、ユダの印形のひもを思い出させます。
創世記38:29ーしかし、その子が手を引っ込めたとき、もうひとりの兄弟のほうが出て来た。それで彼女は、「あなたは何であなたのために割り込むのです」と言った。それでその名はペレツと呼ばれた。
*割り込む…ヘブル語:パラツ。
創世記38:30ーそのあとで、真っ赤な糸をつけたもうひとりの兄弟が出て来た。それでその名はゼラフと呼ばれた。
*本来ならゼラフが長子のはずですが、旧約聖書の系図ではペレツが長子になっている。
エサウとヤコブのふたごのように…。
創世記46:12ーユダの子はエル、オナン、シェラ、ペレツ、ゼラフ。エルとオナンはカナンの地で死んだ。ペレツの子はヘツロンとハムルであった。
ペレツとゼラフは確かにユダの子ではあるが、ユダとタマルは結婚関係には入らなかったのです。
新約のマタイの福音書には『タマルによって』と、ユダの罪を思い起こさせ、異邦人女性タマルの名前が明記されています。
マタイ1:3ーユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、
イエス・キリストの系図に異邦人女性の名前が入ることにより、私たち異邦人にもイエスが買い戻しの権利を持つ親族となってくださったのです。
【買い戻しの権利のある人の条件】
①親族であること。(他人には『買い戻しの権利』はない。)⇨イエスは、ユダ族からユダヤ人として誕生された。
②買い戻すだけの財産を持っていること。⇨イエスが十字架で流された、ご自身の罪の無い神の小羊としての『血』が贖罪の代価となった。
③買い戻す意志が必要。(強制的であってはならない。)⇨ヨハネ10:18ーだれも、わたしからいのちを取った者はいません。わたしが自分からいのちを捨てるのです。わたしは、それを捨てる権威があり、それをもう一度得る権威があります。わたしはこの命令をわたしの父から受けたのです。
ローマ1:16ー私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。