サザエのお裾分け

聖書を字義通り&文脈に沿って学び、理解したことの中からのお裾分け。内容は鵜呑みにせず、必ずご自分で聖書を開いて確認してくださいね。聖書理解の助けになれば幸いです。† 栄光在主 †

神に殺されそうになったモーセ 〜出エジプト記4:19~26〜

モーセの一生は、三つの区分に分けることができます。

①エジプトの王女の息子としての最初の40年…ロイヤルファミリーとして最高の教育を受けた。使徒7:17~22

②ミデヤンの地で羊飼いとしての40年…エジプト〜約束の地へ神の民イスラエルを導く準備期間。使徒7:23~29

イスラエルのリーダー、預言者としての40年使徒7:30~44

 

自分の同胞であるイスラエル民がエジプトで奴隷として虐げられているのを見たモーセは、自分の力でイスラエルの民を救い出そうとしました。思いは正しかったのですが、時がまだ熟してはいなかったため、イスラエルの民に受け入れてもらえませんでした。

 

出エジプト記2:11~12ーこうして日がたち、モーセがおとなになったとき、彼は同胞のところに出て行き、その苦役を見た。そのとき、自分の同胞であるひとりのヘブル人を、あるエジプト人が打っているのを見た。

あたりを見回し、ほかにだれもいないのを見届けると、彼はそのエジプト人を打ち殺し、これを砂の中に隠した。

 

現在でいうところの殺人罪死体遺棄罪、逃亡罪を犯し、ミデヤンの地に逃れ、祭司イテロのところに身を寄せ、イテロの娘たちの中からチッポラを妻に迎え、ふたりの男の子が生まれました。

 

モーセは、アブラハムーイサクーヤコブーレビの家系のイスラエル人ですから、たとえ母チッポラがミデヤン人であっても、イスラエル人を父に持つモーセのふたりの息子ゲルショムとエリエゼル(出エジプト記18:3~4)もアブラハム契約を継承する『イスラエル人』ということになります。

 

聖書の中には、異邦人の母を持つ人がいますが、父親がイスラエル人であれば『イスラエル人』となります。

・パレスとザラ…父:ユダ、母:カナン人タマル

・ボアズ…父:サルモン、母:カナン人ラハブ

・オベデ…父ボアズ、母:モアブ人ルツ

・ソロモン…父:ダビデ母ヘテ人バテ・シュア

・レハブアム…父:ソロモン、母:アモン人ナアマ

 

逆に、母親がイスラエル人であっても、父親が異邦人であれば、その子は『異邦人』となります。聖書は、『イスラエルの女の息子』と呼び、『イスラエル人』と区別しています。

 

レビ記24:10~11ーさて、イスラエルの女を母とし、エジプト人を父とする者が、イスラエル人のうちに出たが、このイスラエルの女の息子とあるイスラエル人とが宿営の中で争った。

そのとき、イスラエルの女の息子が、御名を冒涜してのろったので、人々はこの者をモーセのところに連れて来た。その母の名はシェロミテで、ダン部族のディブリの娘であった。

 

新約聖書においても、異邦人を父の持つ者に宛てた書簡は、異邦人への使徒となったパウロが著者です。

・テモテへの手紙…テモテの父:ギリシャ人、母:イスラエル人ユニケ

・テトスへの手紙ギリシャ

・ピレモンへの手紙…コロサイ在住の異邦人

 

 

モーセが80歳になったとき、神の時が熟しました。

 

出エジプト記4:19ー主はミデヤンでモーセに仰せられた。「エジプトに帰って行け。あなたのいのちを求めていた者は、みな死んだ。」

 

エジプトでの出来事を知って、モーセを殺そうとしていた王家の者たちや殺されたエジプト人の親族や友人たちがみな死んだのです。

出エジプト記2:15ーパロはこのことを聞いて、モーセを殺そうと捜し求めた。しかし、モーセはパロのところからのがれ、ミデヤンの地に住んだ。彼は井戸のかたわらにすわっていた。

 

モーセは殺されるかもしれないという恐怖心から解放されました。

 

 

出エジプト記4:20ーそこで、モーセは妻や息子たちを連れ、彼らをろばに乗せてエジプトの地へ帰った。モーセは手に神の杖を持っていた。

 

*妻や息子たち…妻:ミデヤン人チッポラ、長男:ゲルショム、次男:エリエゼル

 

*神の杖…羊飼いの杖だったものが、これからは神の杖として、エジプトの地での災いの時、紅海の水を分ける時、荒野で岩から水を出す時など、数々の奇跡を行うことになります。

 

出エジプト記4:2~4は彼に仰せられた。「あなたの手にあるそれは何か。」彼は答えた。「杖です。」

すると仰せられた。「それを地に投げよ。」彼がそれを地に投げると、杖は蛇になった。モーセはそれから身を引いた。

はまた、モーセに仰せられた。「手を伸ばして、その尾をつかめ。」彼が手を伸ばしてそれを握ったとき、それは手の中で杖になった。

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出エジプト記4:21ー主はモーセに仰せられた。「エジプトに帰って行ったら、わたしがあなたの手に授けた不思議を、ことごとく心に留め、それをパロの前で行え。しかし、わたしは彼の心をかたくなにする。彼は民を去らせないであろう。

 

*あなたの手に授けた不思議…神から与えられた不思議(驚きと注目を引くもの)、

しるし(神の意志を啓示し、その意図を証言するもの)、

奇跡(常識では理解できないような出来事)。 

 

*わたしは彼の心をかたくなにするモーセが神の命令によって行う様々な不思議によって、イスラエルの神が生きて働かれる神であり、エジプトの偶像の神々とは異なることを示すため。

 

 

出エジプト記4:22ーそのとき、あなたはパロに言わなければならない。主はこう仰せられる。『イスラエルはわたしの子、わたしの初子である。

 

イスラエルはわたしの子、わたしの初子である… 古代世界では、『初子』は長子の権利を持った者として大切のされました。長子の相続権は、他の兄弟の二倍であり、責任もまた二倍です。

神はイスラエルを『初子(長子)』として、メシア的王国において霊的祝福と物質的祝福を用意しておられます。(異邦人は霊的祝福のみ)

また、責任もイスラエル民族としての救いと個人的救いの両方を求めておられます。

(異邦人は個人的救いのみ)

これは、子孫、土地、祝福の約束である『アブラハム契約』に基づく、神とイスラエルの民の親子関係です。

 

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出エジプト記4:23ーそこでわたしはあなたに言う。わたしの子を行かせて、わたしに仕えさせよ。もし、あなたが拒んで彼を行かせないなら、見よ、わたしはあなたの子、あなたの初子を殺す。』」

 

*もし、あなたが拒んで彼を行かせないなら、見よ、わたしはあなたの子、あなたの初子を殺す…エジプトに下る『十番目の災い』の予告

 

これも『アブラハム契約』に基づくもの。

創世記12:3ーあなたを祝福する者をわたしは祝福し、

あなたをのろう者をわたしはのろう。

地上のすべての民族は、

あなたによって祝福される。

 

エジプトは人類史上最初に反ユダヤ主義政策をとった国です。

彼らは、イスラエル人を奴隷として扱い、イスラエル人に生まれた男児ナイル川で溺死させました。

 

神の初子であるイスラエルの民を行かせることを拒んだため、王家から家畜に至るまでエジプトの初子は死に、また出エジプトしたイスラエルの民を連れ戻そうと後を追って来たエジプトの軍隊は、紅海を渡る途中で水の壁が崩れ溺死しました。

 

 

出エジプト記4:24ーさて、途中、一夜を明かす場所でのことだった。主はモーセに会われ、彼を殺そうとされた。

 

*彼を殺そうとされた…エジプトの地で、モーセのいのちを狙っていた者たちがみな死に、神の時が熟し、神によってイスラエルの民をエジプトの奴隷生活から解放するために立てられたのに、なぜ神はモーセを殺そうとされたのでしょうか?

 

モーセのふたりの息子たちも神の民、初子であるイスラエル人として『アブラハム契約』の継承者です。

アブラハム契約』のしるしは、生後八日目に受ける割礼です。

 

創世記17:11~12aーあなたがたは、あなたがたの包皮の肉を切り捨てなさい。それが、わたしとあなたがたの間のしるしである。

あなたがたの中の男子はみな、代々にわたり、生まれて八日目に、割礼を受けなければならない。

 

モーセは、長子であるゲルショムには割礼を施していましたが、異邦人である妻チッポラにとって、それはあまりにも痛々しくて耐えられなかったのでしょう。

25節で彼女が「血の花婿」と言っていることから、チッポラが割礼を嫌悪し、次男のエリエゼルに生後八日目の割礼を施していませんでした。

 

そのため、神は『アブラハム契約』の条項に違反しているモーセを殺そうとされました。

出エジプトの出来事は、アブラハム契約における子孫(ヤコブの一族からイスラエル民族へ)と土地の約束へと繋がります。その契約に違反したままのモーセイスラエルのリーダー、解放者としての資格を与えることはできないのです。

 

 

出エジプト記4:25ーそのとき、チッポラは火打石を取って、自分の息子の包皮を切り、それをモーセの両足につけ、そして言った。「まことにあなたは私にとって血の花婿です。」

 

*そのとき…チッポラは、エリエゼルに割礼を施していないことに気づいて、急いで彼に割礼を施しました。 

ここでは、チッポラが神とモーセの仲裁者の役割を担っています。

 

モーセの両足…『両足』は、男性の陰部の婉曲語。

 

 

 

出エジプト記4:26ーそこで、主はモーセを放された。彼女はそのとき割礼のゆえに「血の花婿」と言ったのである。

 

*放された…チッポラの行動により、モーセは死を免れました。

口語訳:赦された

 

*血の花婿…贖いの血、メシアの型。

 

この後、チッポラとふたりの息子たちはしばらく登場しません。

 

出エジプト記18:2~4ーそれでモーセのしゅうとイテロは、先に送り返されていたモーセの妻チッポラと

そのふたりの息子を連れて行った。そのひとりの名はゲルショムであった。それは「私は外国にいる寄留者だ。」という意味である。

もう一人の名はエリエゼル。それは「私の父の神は私の助けであり、パロの剣から私を救われた。」という意味である。

 

出エジプト記18:2によれば、彼らはミデヤンの地、イテロのもとに送り返されていたことがわかります。割礼の傷が痛むエリエゼルをそのまま連れて行くことができなかったのかもしれませんが、割礼を嫌悪したチッポラは、夫モーセを通して行われる神の民イスラエル出エジプトに伴う大いなる奇跡の目撃者にはなれませんでした。

 

割礼は、アブラハム契約の継承者であるイスラエルの民に命じられたものです。

異邦人に命じられたものではありません。