アモス1:1ーテコアの牧者のひとりであったアモスのことば。これはユダの王ウジヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代、地震の二年前に、イスラエルについて彼が見たものである。
*テコア…アモスの時代には、イスラエル王国は『北イスラエル王国』と『南ユダ王国』とに分裂していました。『テコア』は、南ユダ王国のベツレヘムの南約9kmの所にある村。
*牧者…英語:herdsmen/家畜の世話をする人、Sheepherder/羊の繁殖者
アモスの家族や職業について、聖書は『牧者のひとり』『いちじく桑の栽培者』ということ以上の情報を記してはいません。
アモス7:14ーアモスはアマツヤに答えて言った。「私は預言者ではなかった。預言者の仲間でもなかった。私は牧者であり、いちじく桑の栽培をしていた。
また、エリヤやエリシャが導いていた預言者の一派やほかの預言者の派にも属していないことから、アモスは神から直接啓示を受けて『預言者』となったことが考えられます。
イスラエルでは、『王』はユダ族のダビデの家系から、『大祭司』はレビ族のアロンの家系からと決まっていましたが、『預言者』は十二部族のどこの部族出身者でもなることができました。
エレミヤやエゼキエルは祭司の家系、ダニエルはユダ族出身ですが『預言者』として活躍しました。
創世記49:10ー王権はユダを離れず、
統治者の杖はその足の間を離れることはない。
ついにはシロが来て、
国々の民は彼に従う。
Ⅱサムエル記7:5ー「行って、わたしのしもべダビデに言え。
主はこう仰せられる。あなたはわたしのために、わたしの住む家を建てようとしているのか。
Ⅱサムエル記7:12~13ーあなたの日数が満ち、あなたがあなたの先祖たちとともに眠るとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子を、あなたのあとに起こし、彼の王国を確立させる。
彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしはその王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。
出エジプト記28:1ーあなたは、イスラエル人の中から、あなたの兄弟アロンとその子、すなわち、アロンとその子のナダブとアビフ、エルアザルとイタマルを、あなたのそばに近づけ、祭司としてわたしに仕えさせよ。
出エジプト記29:29ーアロンの聖なる装束は、彼の跡を継ぐ子らのものとなり、彼らはこれを着けて、油そそがれ、祭司職に任命されなければならない。
*アモス…重荷を負う者、の意。
*ユダの王ウジヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代…『ヨアシュの子、ヤロブアム』とは『ヤロブアム二世』のこと。
一人の善王も出なかった北イスラエル王国に対し、南ユダ王国には四人の善王(ヨアシュ、アマツヤ、ウジヤ、ヨタム)が出ました。
『ウジヤ』はその善王の一人であり、北イスラエル王国のヤロブアム二世と共に力があり、南北王国の所有地がダビデ、ソロモンの時代と同等の広さに拡大した時代でもありました。
*地震の二年前に…ゼカリヤ書14:5でも言及されていますが、どの地震を指すのか詳細は不明。
ゼカリヤ書14:5ー山々の谷がアツァルにまで達するので、あなたがたは、わたしの山々の谷に逃げよう。ユダの王ウジヤの時、地震を避けて逃げたように、あなたがたは逃げよう。私の神、主が来られる。すべての聖徒たちも主とともに来る。
*イスラエルについて…ここでの『イスラエル』とは、北イスラエル王国のこと。
*彼が見たもの…ヘブル語のニュアンスでは、『アモスが幻を見た』という意味。
アモスは、南ユダ王国出身の、北イスラエル王国に遣わされた唯一の預言者でした。
(北イスラエル王国出身の預言者が、南ユダ王国で預言したという記録は聖書にはありません。)
アモスは当時の北イスラエル王国における二つの偶像崇拝の中心地、ダンとベテルの『ベテル』に遣わされました。
この二つの地では、金の子牛が礼拝されていました。以下は、北イスラエル王国の初代王ヤロブアム一世の言葉です。
1列王記12:28~29ーそこで、王は相談して、金の子牛を二つ造り、彼らに言った。「もう、エルサレムに上る必要はない。イスラエルよ。ここに、あなたをエジプトから連れ上ったあなたの神々がおられる。」
それから、彼は一つをベテルに据え、一つをダンに安置した。
アモス1:2ー彼は言った。「主はシオンから叫び、エルサレムから声を出される。羊飼いの牧場はかわき、カルメルの頂は枯れる。」
*【主】はシオンから叫び…ヨエル書3:16からの引用
ヨエル書3:16ー主はシオンから叫び、
エルサレムから声を出される。
天も地も震える。
だが、主は、その民の避け所、
イスラエルの子らのとりでである。
預言者ヨエルは、『【主】がシオンから異邦人に向かって叫ぶ』と預言していますが、アモスはそれを『【主】が北イスラエル王国に向かって叫ぶ』と適用しています。
アモス書の主題は、『北イスラエル王国に臨む裁きと破壊』です。
アモスの語る『主の叫び』は、南ユダ王国に位置するエルサレムから、北イスラエル王国に対して向けられています。
*カルメルの頂は枯れる…カルメルは、北イスラエル王国の北西部にある、地中海に突き出た山脈であり、泉が多く、緑豊かなことで有名でした。
そのカルメルの頂でも枯れてしまうという預言がここでなされています。
カルメルでさえ乾いた地となるなら、その他の土地はどれほど乾いた地となるのだろう、という大から小への議論がされています。
干ばつが激しかったエリヤの時代でも、三年半後カルメルには水がありました。
1列王記17~18章では、エリヤはいけにえを捧げた後、カルメル山から雨を招いています。
1列王記18:42~45ーそこで、アハブは飲み食いするために上って行った。エリヤはカルメル山の頂上に登り、地にひざまずいて自分の顔をひざの間にうずめた。
それから、彼は若い者に言った。「さあ、上って行って、海のほうを見てくれ。」若い者は上って、見て来て、「何もありません」と言った。すると、エリヤが言った。「七たびくり返しなさい。」
七度目に彼は、「あれ。人の手のひらほどの小さな雲が海から上っています」と言った。それでエリヤは言った。「上って行って、アハブに言いなさい。『大雨に閉じ込められないうちに、車を整えて下って行きなさい。』」
しばらくすると、空は濃い雲と風で暗くなり、やがて激しい大雨となった。アハブは車に乗ってイズレエルへ行った。