ホセア1:1ーユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代に、ベエリの子ホセアにあった主のことば。
著者は、『ベエリの子ホセア』ですが、どの部族出身の家系か、職業は何かなどは一切書かれていません。ただ『預言者』として召されました。
預言者になるための出身部族は限定されておらず、どの部族からでもなることができました。
イエスはユダ族出身ですが、初臨時は『モーセのような預言者』として、
昇天後は天の聖所の『祭司』として(地上で祭司になれるのはレビ族だけ)、
地上再臨後は『御国の王』として(王になれるのはユダ族だけ)、
一人で三役をこなすことになります。
原語のヘブル語では1章を三人称で、3章を一人称で書いたりしているため、表面的に読むだけでは深い意味は掴みかねるでしょう。
しかし、神がホセアの結婚生活を通して、ご自身の民であり、妻である『イスラエル』に対する苦悩と愛を説いていることに気づけば、三人称で書かれているのは三位一体の神のイスラエルに対する思いであることがわかると思います。
いつホセアに神のことばがあったのか…?
*ユダの王…イスラエルが『南ユダ王国』と『北イスラエル王国』に分裂している時代。
*(南ユダ王国の王が)ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの時代… BC783~686年。
*(北イスラエルの王が)ヨアシュの子ヤロブアムの時代…ヤロブアムⅡ世。BC786~746年。
北王国ヤロブアムⅡ世と南王国ウジヤの同時期、ダビデ・ソロモン時代に匹敵するほどの領土を保有し、繁栄していました。
Ⅱ列王記14:25ー彼は、レボ・ハマテからアラバの海までイスラエルの領土を回復した。それは、イスラエルの神、主が、そのしもべ、ガテ・ヘフェルの出の預言者アミタイの子ヨナを通して仰せられたことばのとおりであった。
この時代の預言者に『アモスーユダ出身で北イスラエルに遣わされた唯一の預言者ー』がいます。アモスは領土が回復し、国が繁栄している北王国の道徳的腐敗、社会的不義に陥っているイスラエルに臨む神の裁きと破壊について預言しています。
他方、ホセアは神の愛を伝えた預言者となっています。しかし、ホセア自身、その神の愛と苦悩を自分の結婚生活を通して体験的に知ることになるのです。
『神とその妻イスラエルの関係ーエゼキエル書16章ー』さらに言えば、『キリストと花嫁なる信者の関係ーⅡコリント11:2ー』の縮図が『結婚生活』において学ぶことができるということなのかもしれません。
ホセア書を大きく分けると
1)ホセアの結婚生活と神の思い…1〜3章
2)イスラエルの罪に対する神の告発…4〜5章
3)イスラエルの背信と神のさばき…6〜10章
4)悔い改めへの招きと祝福…11〜14章
ホセア1:2ー主がホセアに語り始められたとき、主はホセアに仰せられた。「行って、姦淫の女をめとり、姦淫の子らを引き取れ。この国は主を見捨てて、はなはだしい淫行にふけっているからだ。」
*行って姦淫の女をめとり…人間的には、神が命じられたこととは思えない命令です。
しかし、だからといってこの聖句を『比喩的』と簡単に決めつけていいのでしょうか?
妻となるゴメルがこの時点で実際に『姦淫をしていた』のか、普通の女性であったのかは不明ですが、いずれ『姦淫』を犯すとわかっている女性と結婚するようにという命令です。ホセアはこの理不尽な命令に従い、ディブライムの娘ゴメルと結婚します。
*姦淫の子らを引き取れ…ホセアは姦淫の女ゴメルと結婚し、第一子として男の子『イズレエル』をもうけますが、6節の第二子の女の子ロ・ルハマと8節の第三子の男の子ロ・アミには、『彼に』ということばがありません。『ロ・ルハマ』と『ロ・アミ』こそが、ゴメルが姦淫によって産んだ『姦淫の子ら』ということでしょう。
ホセア1:3ーそこで彼は行って、ディブライムの娘ゴメルをめとった。彼女はみごもって、彼に男の子を産んだ。
ホセア1:6ーゴメルはまたみごもって 女の子を産んだ。主は彼に仰せられた。「その子をロ・ルハマと名づけよ。わたしはもう二度とイスラエルの家を愛することはなく、決して彼らを赦さないからだ。
*ロ・ルハマ…愛されない、の意。
北イスラエル王国の背信の罪に対する神の宣言の意味でしょう。
ホセア1:8ーゴメルは、ロ・ルハマを乳離れさせてから、みごもって男の子を産んだ。
*乳離れさせてから…ロ・ルハマを産んで、3年くらいしてからと思われます。つまり、その間、 神は忍耐して北イスラエルの悔い改めを待っておられたということ。
*ロ・アミ…私の民ではない、の意。
ゴメルの産んだ第二子、第三子の名前は神によって付けられた『神とイスラエルの関係』を表しています。ゴメルの子どもたちの名前には、神のイスラエルに対する思いが反映されています。『この国は主を見捨てて、はなはだしい淫行にふけっているからだーホセア1:2ー』
神の目から見たイスラエルは、夫である真の神を捨てて偶像の神々を慕い、霊的姦淫を犯している妻でした。その神の苦悩を預言者ホセアは、自身の結婚生活において経験によって知ることになるのです。
一方、ゴメルがホセアに産んだ第一子の名は『イズレエル』です。
*イズレエル…地名:BC842年に、エフーがクーデターを起こしオムリ王朝のアハブ王家の者を殺し、王妃イゼベルをバルコニーから突き落として、ナボテの血に報いた場所。Ⅱ列王記9章
オムリ王朝を倒したエフー王朝も、神のみこころに沿った歩みをせず、偶像崇拝の道に走り、ヤロブアム Ⅱ 世の時代には、不正が蔓延っていたため、神によって立てられた王朝であっても、イズレエルの流血の悲劇が同じように襲うということ。
それは、ヤロブアムの子ゼカリヤがヤベシュの子シャルムによって殺されたことによって成就しました。Ⅱ列王記15:8~10
ホセア書2章は、ホセアの妻ゴメルの行動とイスラエルの背信、悔い改めが見事に重なっています。
ホセア2:2ー「あなたがたの母をとがめよ。とがめよ。
彼女はわたしの妻ではなく、
わたしは彼女の夫ではないからだ。彼女の顔から姦淫を取り除き、
その乳房の間から姦通を取り除け。
ホセア2:5ー彼らの母は姦淫をし、
彼らをはらんで恥をさらし、
そして言った。
「私は恋人たちのあとを追う。
彼らは私にパンと水、羊毛と麻、
油と飲み物を与えてくれる。』と。
ホセア2:7ー彼女は恋人たちのあとを追って行こう。
しかし、彼らに追いつくことはない。
彼らを捜し求めよう。
しかし、見つけ出すことはない。
彼女は言う。
『私は行って、初めの夫に戻ろう。
あの時は、今よりも私はしあわせだったから。』
ゴメルは、ホセアと三人の子どもたちを捨てて愛人のもとへと行ってしまいました。
同じようにイスラエルは、エジプトでの奴隷生活から救い出してくださり、『モーセ契約』という契りを交わした真の神を捨て、偶像崇拝へと向かって行ったのです。
夫であるホセアの妻の裏切りに対する怒りと妻に対する思いは、そのまま神のイスラエルに対する思いと重なります。妻に対する愛情が強ければ強いほど、その怒りと悲しみもまた強いのです。
イスラエルの背信については、エゼキエル書16章に記されています。
エゼキエル16:26~29ーあなたは、良いからだをした隣のエジプト人と姦通し、ますます姦淫を重ねてわたしの怒りを引き起こした。
見よ。わたしは、あなたに手を伸ばして、あなたの食糧を減らした。そして、あなたを憎む者、あなたのみだらな行いによってはずかしめを受けたペリシテ人の娘たち思いのままに、あなたを任せた。
あなたはそれでもまだ飽き足らず、アッシリヤ人と姦通した。彼らと姦通しても、まだあなたは飽き足らず、
商業地カルデヤとますます姦淫を重ねたが、それでも、あなたは飽き足らなかった。
エゼキエル16:33ー遊女には、すべて代価が支払われるのに、あなたは、自分のほうから持参金をすべての愛人たちに与え、彼らに贈り物をして、四方からあなたのところに来させて姦淫をした。
そのような背信のイスラエルに対し、神の大きな愛と憐れみのゆえに「真実をもってあなたと契りを結ぶ。」と神は言われます 。
ホセア2:19~20ーわたしはあなたと永遠に契りを結ぶ。
正義と公義、恵みとあわれみをもって、
契りを結ぶ。
わたしは真実をもってあなたと契りを結ぶ。
このとき、あなたは主を知ろう。
*恵み…ヘブル語:ヘセド。『契約に基づいた愛』を表す。
*あわれみ…ヘブル語:ラハム。『子どもや弱者に対する慈悲、愛』を表す。
エレミヤ31:31~32ー 見よ。その日が来る。ー主の御告げ。ーその日、わたしは、イスラエルの家とユダの家とに新しい契約を結ぶ。
その契約は、わたしが彼らの先祖の手を握って、エジプトの国から連れ出した日に、彼らと結んだ契約のようではない。わたしは彼らの主であったのに、彼らはわたしの契約を破ってしまった。ー主の御告げ。ー
*エジプトの国から連れ出した日に、彼らと結んだ契約…『モーセ契約』。613からなる律法。旧い契約。
*新しい契約…神が『イスラエルの家』と『ユダの家』とに対して結んだ契約を、キリストが十字架で流された『神の小羊の血』によって承認され、有効となったもの。
この契約に基づき『わたしの民でない者ーロ・アミ』である背信のイスラエルも、異邦人も罪赦され、主であるイエスに「あなたはわたしの神。」と言い、「あなたはわたしの民。」と言われるのです。
その後、ホセアに再び主からの命令が出されます。
ホセア3:1ー主は私に仰せられた。「再び行って、夫に愛されていながら姦通している女を愛せよ。ちょうど、ほかの神々に向かい、干しぶどうの菓子を愛しているイスラエルの人々を主が愛しておられるように。」
2節を見ると『銀十五シェケルと大麦1ホメル半で彼女を買い取った』とあるので、この時点でゴメルは、偶像(バアル)の神殿娼婦か、奴隷の娼婦にまで落ちていたと思われます。
*十五シェケル…奴隷の値段の半分。
出エジプト記21:32ーもしその牛が、男奴隷、あるいは女奴隷を突いたなら、牛の持ち主はその奴隷の主人に銀貨三十シェケルを支払い、その牛は石で打ち殺されなければならない。
*十五シェケルが『人頭税』だとすると、一人当たり『半シェケル』ですから、30人分の人頭税に値します。
出エジプト記30:12~13ー「あなたがイスラエル人の登録のため、人口調査をするとき、その登録にあたり、各人は自分自身の贖い金を主に収めなければならない。これは、彼らの登録によって、彼らにわざわいが起こらないためである。
登録されている者はみな、聖所のシェケルで半シェケルを払わなければならない。一シェケルは二十ゲラであって、おのおの半シェケルを主への奉納物とする。
*1ホメル半…540リットル。1ホメル=360リットル。
『人頭税』だとすると、ホセアは自分の妻を買い戻すために多額の出費をしたことになります。ここにキリストの十字架での『贖いの血の代価』が重なってきます。
ホセア3:3ー私は彼女に言った。「これから長く、私のところにとどまって、もう姦淫をしたり、ほかの男と通じたりしてはならない。わたしもあなたにそうしよう。」
ご自分の選びの民として、また妻としたイスラエルが、自分を捨てほかの神々を慕い淫行を行っている中で、多額な支払いをしてまで買い戻すほどに、神はイスラエルを愛しておられるのです。
*わたしもあなたにそうしよう…続く4〜5節からイスラエルが長い間、捕囚の民となることを意味 。
ホセア3:4ーそれは、イスラエル人は長い間、王もなく、首長もなく、いけにえも、石の柱も、エポデも、テラフィムもなく過ごすからだ。
北イスラエルーアッシリヤ捕囚、南ユダーバビロン捕囚となることの預言。
5節によると、イスラエルが最終的に神に立ち返るのは『終わりの日=患難時代』であることがわかります。それまで彼らは、神の小羊の血というキリストの十字架で神が払われた代価を拒み続けことになります。