キリストによって異邦人の使徒となったパウロはその書簡の中で、私たちの信仰の歩みに必要な指針を与えています。
『キリストの教え・命令』と聞くと、多くの人がマタイ〜ヨハネまでの四福音書のイエスのことばを思い起こすことでしょう。しかし、福音書に記されたイエスの教えのほとんどは、まだ十字架前の律法が有効の時代、つまり、旧約時代のユダヤ人立ちに対する教えです。今は、十字架後の教会時代に生きる『異邦人信者』ですから、キリストが「わたしが命じておいたことを守るように教えなさい」ーマタイ28:20ーと託された使徒たちの教え、特に異邦人の使徒となったパウロ書簡の教えに耳を傾けるべきなのです。
テトス3:1ーあなたは彼らに注意を与えて、支配者たちと権威者たちに服従し、従順で、すべての良いわざを進んでする者とならせなさい。
*支配者たちと権威者たちに服従し… その理由は、ローマ13:1~2, 1ペテロ2:13~15にあります。
ローマ13:1~2ー人はみな、上に立つ権威に従うべきです。神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです。
したがって、権威に逆らっている人は、神の定めにそむいているのです。そむいた人は自分の身にさばきを招きます。
1ペテロ2:13~15ー人の立てたすべての制度に、主のゆえに従いなさい。それが主権者である王であっても、
また、悪を行なう者を罰し、善を行なう者をほめるように王から遣わされた総督であっても、そうしなさい。
というのは、善を行なって、愚かな人々の無知の口を封じることは、神のみこころだからです。
しかしながら、信者がどうしても従うことのできない命令が三つあります。
①キリスト・イエスを否定せよ…本当にキリストを信じて、たましいの救いを得た者は、イエスの神性、メシア性を否定することはできません。
②偶像崇拝の強制…皇帝崇拝、天皇崇拝、反キリストの獣の像、マリア像など、真の神以外を拝むことはできません。
ダニエルの三人の友人たちは偶像崇拝を拒んで、火の燃える炉に投げ込まれました。ーダニエル書3章
③福音伝道を止めよ…伝道(宣教)命令はキリストの命令です。
マタイ28:19~20ーそれゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。そして、父、子、聖霊の御名によってバプテスマを授け、
また、わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。
これらの命令が『上の権威』から出された場合、私たちは使徒たちにならい、人の命令よりも神の命令に従うべきです。
使徒5:27~29ー彼らが使徒たちを連れて来て議会の中に立たせると、大祭司は使徒たちを問いただして、
言った。「あの名によって教えてはならないときびしく命じておいたのに、何ということだ。エルサレム中にあなたがたの教えを広めてしまい、そのうえ、あの人の血の責任をわれわれい負わせようとしているではないか。」
ペテロをはじめ使徒たちは答えて言った。「人に従うより、神にしたがうべきです。
私たちクリスチャンは、『すべての良い行いに歩むように』造られました。
エペソ2:10ー私たちは神の作品であって、良い行ないをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです。神は、私たちが良い行ないに歩むように、その良い行ないをもあらかじめ備えてくださったのです。
テトス3:2ーまた、だれをもそしらず、争わず、柔和で、すべての人に優しい態度を示す者とならせなさい。
*すべての人…信者、未信者関係なく、すべての人。
*そしらず…人を悪く言ったり、非難すること。
*柔和…御霊の実の一つ。
ガラテヤ5:22~23ーしかし、御霊の実は、愛、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、
柔和、自制です。このようなものを禁ずる律法はありません。
テトス3:3ー私たちも以前は、愚かな者であり、不従順で、迷った者であり、いろいろな欲情と快楽の奴隷になり、悪意とねたみの中に生活し、憎まれ者であり、互いに憎み合う者でした。
*私たちも以前は…信者になる前は、の意。
*いろいろな欲情と快楽の奴隷…cf ローマ6:20~21ー罪の奴隷であった時は、あなたがたは義については、自由にふるまっていました。
その当時、今ではあなたがたが恥じているそのようなものから、何か良い実を得たでしょうか。それらのものの行き着く所は死です。
テトス3:4ーしかし、私たちの救い主なる神のいつくしみと人への愛とが現れたとき、
*救い主なる神…キリスト・イエス 。目に見えない神の愛と慈しみとは、御子イエスを通して現わされました。
テトス3:5ー神は、私たちが行った義のわざによってではなく、ご自分のあわれみのゆえに、聖霊による、新生と更新との洗いをもって私たちを救ってくださいました。
*あわれみのゆえ…私たちが救われたのは、私たちの努力や良い行ないによるのではなく、神のあわれみと恵みによるのです。
ヨハネ6:44ーわたしを遣わした父が引き寄せられないかぎり、だれもわたしのところに来ることはできません。わたしは終わりの日にその人をよみがえらせます。
エペソ2:8~9ーあなたがたは、恵みのゆえに、信仰によって救われたのです。それは、自分自身から出たことではなく、神からの賜物です。
行いによるのではありません。誰も誇ることのないためです。
テトス3:6ー神は、この聖霊を、私たちの救い主なるイエス・キリストによって、私たちに豊かに注いでくださったのです。
ヨハネ16:7~8ーしかし、わたしは真実を言います。わたしが去って行くことは、あなたがたにとって益なのです。それは、もしわたしが去って行かなければ、助け主があなたがたのところにこないからです。しかし、もし行けば、わたしは助け主をあなたがたのところに遣わします。
その方が来ると、罪について、義について、さばきについて、世にその誤りを認めさせます。
テトス3:7ーそれは、私たちがキリストの恵みによって義と認められ、永遠のいのちの望みによって、相続人となるためです。
*キリストの恵みによって義とみとめられ…ローマ10:4ーキリストが律法を終わらせられたので、信じる人はみな義と認められるのです。
*相続人…私たちはキリストを信じる信仰により『神の子ども』となる特権をいただきました。神の子どもとされた者は、アブラハム契約の『祝福』を受け継ぐ者となり、キリストの御国に入る特権を与えられました。
ヨハネ1:12ーしかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。
ローマ8:17ーもし子どもであるなら、相続人でもあります。私たちがキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているなら、私たちは神の相続人であり、キリストとの共同相続人であります。
テトス3:8ーこれは信頼できることばですから、私は、あなたがこれらのことについて、確信をもって話すように願っています。それは、神を信じている人々が、良いわざに励むことを心がけるようになるためです。これらのことは良いことであって、人々に有益なことです。
*確信をもって話す…Ⅱコリント2:17ー私たちは、多くの人のよに、神のことばに混ぜ物をして売るようなことはせず、真心から、また神によって、神の御前でキリストにあって語るのです。
テトス3:9ーしかし、愚かな議論、系図、口論、律法についての論争などを避けなさい。それらは無益で、むだなものです。
*愚かな議論、系図、口論、律法についての論争…パウロは『網羅的律法』を重んじるユダヤ主義者たちが拘り、ふっかけてくる様々な議論を念頭において、それらを避けるようにテトスに命じています。
テトス3:10ー分派を起こす者は、一、二度戒めてから、除名しなさい。
*分派…1テモテ6:3~5ー違ったことを教え、私たちの主イエス・キリストの健全なことばと敬虔にかなう教えとに同意しない人がいるなら、
その人は高慢になっており、何一つ悟らず、疑いをかけたり、ことばの争いをしたりする病気にかかっているのです。そこから、ねたみ、争い、そしり、悪意の疑りが生じ、
また、知性が腐ってしまって真理を失った人々、すなわち敬虔を利得の手段と考えている人たちの間には、絶え間のない紛争が生じるのです。
1コリント11:18~19ーまず第一に、あなたがたが教会の集まりをするとき、あなたがたの間には分裂があると聞いています。ある程度は、それを信じます。
というのは、あなたがたの中でほんとうの信者が明らかにされるためには、分派が起こるのもやむをえないからです。
*一、二度戒めてから…マタイ18:15~17ーまた、もし、あなたの兄弟が罪をおかしたなら、行って、ふたりだけのところで責めなさい。もし聞き入れたら、あなたは兄弟を得たのです。
もし聞き入れないなら、ほかにひとりかふたりをいっしょに連れて行きなさい。ふたりか三人の証人の口によって、すべての事実が確認されるためです。
それでもなお、言うことを聞き入れようとしないなら、教会に告げなさい。教会の言うことさえも機構としないなら、彼を異邦人か取税人のように扱いなさい。
テトス3:11ーこのような人は、あなたも知っているとおり、堕落しており、自分で悪いと知りながら罪を犯しているのです。
一、二度戒めを受けてもなお罪を悔い改めようとしない者は、罪の虜になってしまっています。 パウロは、そのような人を『除名』することによって、その人の霊が主の日に救われるためだと記しています。
1コリント5:5ーこのような者をサタンに引き渡したのです。それは彼の肉が滅ぼされるためですが、それによって彼の霊が主の日に救われるためです。
テトス3:12ー私がアルテマスかテキコをあなたのもとに送ったら、あなたは、何としてでも、ニコポリにいる私のところに来てください。私はそこで冬を過ごすことに決めています。
パウロはアルテマスかテキコをくれてにいるテトスのもとに送ったら、テトスはニコポリにいるパウロと合流するように頼んでいます。
*アルテマス…詳細不明
*テキコ…使徒20:4ープロの子であるベレヤ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコ とセクンド、デルベ人ガイオ、テモテ、アジヤ人テキコとトロピモは、パウロに同行していたが、
エペソ6:21ーあなたがたにも私の様子や、私が何をしているかなどを知っていただくために、主にあって愛する兄弟であり、忠実な奉仕者であるテキコが、一部始終を知らせるでしょう。
Ⅱテモテ4:12ー私はテキコをエペソに遣わしました。
*ニコポリ…ギリシャ西岸の温暖な地
テトス3:13ーぜひとも、律法学者ゼナスとアポロとが旅に出られるようにし、彼らが不自由しないように世話をしてあげなさい。
*律法学者ゼナス…詳細不明
*アポロ…パウロの同労者のひとり。
使徒18:24ーさて、アレキサンドリヤの生まれで、雄弁なアポロというユダヤ人がエペソに来た。彼は聖書に通じていた。
*旅に出られるように…伝道旅行。
ローマ12:13ー聖徒の入用に協力し、旅人をもてなしなさい。
テトス3:14ー私たち一同も、なくてならないもののために、正しい仕事に励むように教えられなければなりません。それは、実を結ばない者にならないためです。
*私たち一同…みことばのために労する者たちのこと
*なくてはならないもののために…生活における優先順位。キリスト者にとっての優先順位は JOY= ①J…Jesus、②O…Others、③Y…Yourself
*実を結(ぶ)…キリスト者が結ぶべき実は『御霊の実』です。
ガラテヤ5:22~23ーしかし、御霊の実は、愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、
柔和、自制です。このようなものを禁ずる律法はありません。
*愛、喜び、平安…神から。J
*寛容、親切、善意…他者に対して。O
*誠実、柔和、自制…自分自身。Y
テトス3:15ー私といっしょにいる者たち一同が、あなたによろしくと言っています。私たちの信仰の友である人々に、よろしく言ってください。
恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。
パウロは最後に、主にある親しい者同士に送る挨拶文をもって筆を置いています。