ヨハネの黙示録は間接的な預言を含むと、550箇所もの旧約聖書の預言を時系列に並べたものです。
中でも、ダニエル書は『患難時代』が七年間続くことわかる黙示録を紐解く鍵ともいえる重要な預言書です。
黙示録の区分
黙示録1章ーヨハネが黙示録の啓示が与えられる時に『見た』こと
黙示録2〜3章ーヨハネが生きていた時の『今ある』こと(1世紀当時実在したアジアにある教会)
黙示録4章以降ー『この後』(2〜3章の教会時代の後)に起こること(4〜5章は、七年間の患難時代が始まる前の天での様子)
*2〜3章は地上の教会、4〜5章ではヨハネの視点は天にあり、(普遍的)教会も天に挙げられているため、携挙は、黙示録3章と4章の間に起こります。
6章からはいよいよ患難時代に入ります。その始まりは『七つの封印』が解かれるところからです。
それを解くことが出来るのは、神の小羊であるイエスのみです。
『患難時代』はいろいろな言葉で表現されています。
①ヤコブの苦しみの時…エレミヤ30:7
ああ。
その日は大いなる日、比べるものもない日だ。
それはヤコブにも苦難の時だ。
しかし彼はそれから救われる。
*ヤコブ…アブラハムーイサクーヤコブの子孫がユダヤ人となるため、『イスラエル民族』を指す。
親から付けられた名:ヤコブ
神から付けられた名:イスラエル
②ダニエルの七十週目…ダニエル9:24~27
あなたの民とあなたの聖なる都については、七十週が定められている。それ
は、そむきをやめさせ、罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻
と預言とを確証し、至聖所に油をそそぐためである。
それゆえ、しれ。悟れ。引き揚げてエルサレムを再建せよ、との命令が出て
から、油そそがれた者、君主の来るまでが七週。また六十二週の間、その苦
しみの時代に再び広場とほりが建て直される。
その六十二週の後、油そそがれた者は断たれ、彼には何も残らない。やがて
来たるべき君主の民が町と聖所を破壊する。その終わりには洪水が起こり、
その終わりまで戦いが続いて、荒廃がさだめられている。
彼は一週の間、多くの者と堅い契約を結び、半週の間、いけにえとささげ者
をやめさせる、荒らす忌むべき者が翼に現れる。ついに、定められた絶滅が、
荒らす者の上にふりかかる。」
③試練の時…黙示録3:10
あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試み
るために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。
*全世界に来ようとしている試練…七年間の患難時代は、イスラエルだけでなく『全世界』に及びます。携挙以外のこの試練から逃れる術はありません。
④御怒りの大いなる日…黙示録6:17
御怒りの大いなる日が来たのだ。だれがそれに耐えられよう。」
⑤主の日…患難時代を表わす代表的な言葉
イザヤ2:12ーまことに、万軍の主の日は、
すべておごり高ぶる者、すべて誇る者に
襲いかかり、これを低くする。
イザヤ13:6ー泣き喚け。主の日は近い。
全能者から破壊が来る。
イザヤ13:9ー見よ。主の日が来る。残酷な日だ。
憤りと燃える怒りをもって、
地を荒れすたらせ、
罪人たちをそこから根絶やしにする。
イザヤ13:13ーそれゆえ、わたしは天を震わせる。
万軍の主の憤りによって、
その燃える怒りの日に、
大地はその基から揺れ動く。
エレミヤ46:10ーその日は、万軍の神、主の日、
仇に復讐する復讐の日。
剣は食らって飽き、彼らの血に酔う。
北の地、ユーフラテス川のほとりでは、
万軍の神、主に、いけにえがささげられる。
ヨエル1:15ーああ、その日よ。主の日は近い。
全能者からの破壊のように、その日が来る。
1テサロニケ5:2ー主の日が夜中の盗人のように来るということは、あなたがた自身がよく承知しているからです。
*主日…時々、教会では日曜日を指して使われていますが、聖書では日曜日を『週の初めの日』といいます。
ヨハネ20:1ーさて、週の初めの日に、マグダラのマリヤは、朝早くまだ暗いうちに墓に来た。そして、墓から石が取りのけてあるのを見た。
『ダニエルの七十週の預言』は、ダニエル書9:24~27にあります。
ダニエル9:24ーあなたの民とあなたの聖なる都については、七十週が定められている。それは、そむきをやめさせ、罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻と預言とを確証し、至聖所に油をそそぐためである。
ヘブル語では「週」=「シャブオット」と言います。*『〜オット』は、女性名詞の複数形
しかし、この箇所では「シャブオット」ではなく「シャイブ=7」ということばが使われているので、正しくは「70の7倍の預言」であって「七十週」というのは誤訳です。「ダニエルの七十週の預言」として有名ですけどね💦
*あなたの民…ダニエルの民、つまり『イスラエル民族』
*あなたの聖なる都…ダニエルの聖なる都『エルサレム』
*七十週…70の7倍、つまり、70x7=490年
その目的は、イスラエルに
①そむきをやめさせ
②罪を終わらせ
③咎を贖い
④永遠の義をもたらし
⑤まぼろしと預言とを確証し
⑥至聖所に油をそそぐため
ダニエル9:25ーそれゆえ、知れ。悟れ。引き揚げてエルサレムを再建せよ、との命令が出てから、油そそがれた者、君主の来るまでが
七週。また六十二週の間、その苦しみの時代に再び広場となりほりが建て直される。
*引き揚げてエルサレムを再建せよ、との命令が出てから…これが計算の起点
この『命令』を ⑴ にするのか、⑵ にするのかにより意見の相違があります。
⑴ BC538年のクロス王の命令とする…エズラ記1:1~4
⑵ BC457年アルタシャスタ王が、イスラエルの民のエルサレム帰還許可を与えた年とする…エズラ記7:11~26
聖書が預言した『命令』形をとっているのは、⑴ のペルシャのクロス王の命令の方です。
イザヤ44:28ーわたしはクロスに向かっては、『わたしの牧者、わたしの望む事をみな成し遂げる。』と言う。
エルサレムに向かっては、『再建される。神殿は、その基が据えられる。』と言う。」
イザヤは、クロス王がこの世に現われる150年も前に預言しています。
また、クロス王は旧約聖書の中で唯一『油そそぎ』を受けた異邦人であることを考えると、バビロンに捕囚の民となっていたユダヤ人たちを解放し、エルサレムの再建命令を出すためだったことがわかります。ーイザヤ45:1~7
ダニエルが預言した『七十週/490年』の中の三つの期間
*七週…7の7倍=49年
*六十二週…62の7倍=434年
*一週…1の7倍=7年
*その苦しみの時代に再び広場とほりが建て直される…七週は、エルサレム再建にかかる49年間を意味
*油そそがれた者、君主の来るまでが七週、また六十二週の間…七週と六十二週の二つと合わせると、49+434=483年となります。
帰還命令が発令されてからの483年間は、メシアである君主の初臨とともに終わりを迎えます。
ダニエル9:26ーその六十二週の後、油そそがれた者は断たれ、彼には何も残らない。やがて来たるべき君主の民が町と聖所を破壊する。
その終わりには洪水が起こり、その終わりまで戦いが続いて、荒廃が定められている。
※七週と六十二週の間には何かが起こるというギャップはありませんが、六十二週と最後の一週の間には時間的ギャップがあり、その間には①〜起こります。
*その六十二週の後…そのギャップの間に起こることが、26節の内容。
*油そそがれた者は断たれ…①メシアの身代わりの(十字架の)死
メシア(=油そそがれた者)は、断たれ(殺され)るということ。
*彼には何も残らない…イエスの死の状態を説明するために『無』を意味しており、イエスを葬った墓も残ってはいません。(※復活されたからです)
ヘブル語では『自分のためだけでない』つまり、イエスが自分自身のために死んだのではなく、『ほかの人のために死んだこと』を意味します。
*来たるべき君主…反キリスト
*来たるべき君主の民…反キリストに属する者たち。
『民』には定冠詞がついているため、行動の主体である特別な民ということ。
『来たるべき君主』と『民』の国籍は同じであり、反キリストに組する民は、全員患難時代を生きる異邦人たちから出るということ。
*町と聖所を破壊する…②反キリストの民ーメシアを信じず、神に神に逆らう者たちーによってエルサレムの町と聖所が破壊されます。
時系列的に、メシアが断たれた後に、エルサレムの都と神殿は破壊されるという預言です。
これはメシアの死から40年後のAD70年に、異邦人であるローマ人によって成就しました。
反キリストは、エルサレムの都と神殿を崩壊する異邦人人たちと同じ国民となるため、この節が『反キリストが異邦人であるローマ人の末裔である』ことを示す根拠となります。『異邦人の時』に起こる最後の第四の帝国ーローマ帝国ーの流れ。
*その終わりには洪水が起こり…『洪水』が象徴的に用いられた場合、常に『軍事的侵略』を意味します。
黙示録12:15ーところが、蛇はその口から水を川のように女のうしろへ吐き出し、彼女を大水で押し流そうとした。
ローマの総督ピラト以降失政が続き、ユダヤ人たちの窮乏は深まる中、重税に喘ぐ農民たちの不満は、ローマ政府だけでなく、ローマに取り入って特権や富を得ている指導者たちや貴族階級の人々に対しても向けられ、内乱も起きかねない状況でした。
AD64年にヘロデ大王が着手した神殿の改修工事が完了すると、18,000人以上の失業者を生み出し、ユダヤ人たちの不満は農村地方からエルサレムまで広がりました。
AD66年には、全イスラエル人がローマに対して立ち上がり、ローマの要塞を次々と陥落し、民族的宗教感情を高めていきました。
ローマ皇帝ネロは、AD67〜69年にかけてヴェスパシアヌスを派遣し、ガリラヤ地方を鎮静したものの、エルサレムの制圧目前にローマ国内の変事のために包囲を解き、ローマに帰還しました。
この時に、ルカが記しているイエスの言葉にしたがったのが、当時のメシアニックジューたちです。
ルカ21:20~22ーしかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい。
そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にいる人々は、そこから立ちのきなさい。いなかにいる者たちは、都に入ってはいけません。
これは、書かれているすべてのことが成就する報復の日だからです。
新ローマ皇帝に即位したヴェスパシアヌスは、AD70年に長子ティトスを指揮官として大群をエルサレムに派遣し、完全な包囲作戦をとりました。
こうしてエルサレムは、ローマの軍事的侵略(最初はヴェスパシアヌス、次にティトスの下)によって破壊されました。
*その終わりまで戦いが続いて…最初の六十九週と七十週が始まるまでの間には、土地での戦いがあることが預言されています。
これは、中東の歴史を見れば確認可能です。
*荒廃が定められている…戦いの結果としての土地の結果。神によって『定められ』ているということ。
AD70年〜1948年にイスラエル国家が再建されるまで、約束の地は荒廃していました。ここまでが既に歴史上成就している内容です。
ダニエル9:27ー彼は一週の間、多くの者と堅い契約を結び、半週の間、いけにえとささげものをやめさせる、荒らす忌むべき者が翼に現れる。ついに、定められた絶滅が、荒らす者の上にふりかかる。」
*彼…反キリスト
*一週の間…ダニエルの七十週の最後の一週。七十週目=七年間の患難時代
*多くの者…イスラエルの多くの者たちが、反キリストとの堅い契約を結ぶことに賛同するということ。※全員ではないことに注目
最後の一週との間にはギャップがあるため、開始を告げるしるしが必要となり、その開始点が『反キリストとイスラエルとの堅い契約締結』です。
この契約が結ばれると、七年間の患難時代の幕開けとなります。
*半週の間…1/2 x 7=3.5 つまり、3年半。
*いけにえとささげものをやめさせる…七年間の患難時代の中で3年半の間『いけにえとささげものをやめさせる』ためには、前半の3年半もしくはそれ以前のどこかのタイミングで、エルサレムに第三神殿が建ち、機能している必要があります。
*翼…七十人訳聖書では『神殿』
*荒らす忌むべき者…反キリスト
イスラエルと堅い契約(第三神殿でモーセの律法に従って、いけにえやささげものをささげていることできていることから、おそらく『平和条約』だと思われる)を結んだはずの反キリストが、患難時代の中間になると契約を反故にし、自分自身を神として拝むように命じます。黙示録13章
*定められた絶滅が、荒らす者の上にふりかかる…反キリストの敗北は、神によって定められています。彼は、地上再臨したキリストによって倒され、燃える火の池になげこまれます。
Ⅱテサロニケ2:8ーその時になると、不法の人が現れますが、主は御口の息をもって彼を殺し、来臨の輝きをもって滅ぼしてしまわれます。
黙示録19:20ーすると、獣は捕らえられた。また、獣の前でしるしを行い、それによって獣の刻印を受けた人々と獣の像を拝む人々とを惑わしたあのにせ預言者も、彼といっしょに捕らえられた。そして、このふたりは、硫黄の燃えている火の池に、生きたままで投げ込まれた。