1:1ー使徒となったパウロ――私が使徒となったのは、人間から出たことでなく、また人間の手を通したことでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中からよみがえらせた父なる神によったのです――
*使徒となったパウロ…パウロは、キリスト・イエスの公生涯の時はまだイエスをメシアだと信じていないユダヤ教のパリサイ派に属していました。
キリスト教徒たちを迫害するためにダマスコに向かう途中で復活の主と出会い、『異邦人への使徒』として召されました。
使徒26:9~18ー以前は、私自身も、ナザレ人イエスの名に強硬に敵対すべきだと考えていました。
そして、それをエルサレムで実行しました。祭司長たちから権限を授けられた私は、多くの聖徒たちを牢に入れ、彼らが殺されるときには、それに賛成の票を投じました。
また、すべての会堂で、しばしば彼らを罰しては、強いて御名をけがすことばを言わせようとし、彼らに対する激しい怒りに燃えて、ついには国外の町々にまで彼らを追跡して行きました。
このようにして、私は祭司長たちから権限と委任を受けて、ダマスコへ出かけて行きますと、
その途中、正午ごろ、王よ、私は天からの光を見ました。それは太陽よりも明るく輝いて、私と同行者たちとの回りを照らしたのです。
私たちはみな地に倒れましたが、そのとき声があって、ヘブル語で私にこう言うのが聞こえました。『サウロ、サウロ。なぜわたしを迫害するのか。とげのついた棒をけるのは、あなたにとって痛いことだ。』
私が『主よ。あなたはどなたですか』と言いますと、主がこう言われました。『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたが見たこと、また、これから後わたしがあなたに現れて示そうとすることについて、あなたを奉仕者、また証人に任命するためである。
わたしは、この民と異邦人との中からあなたを救い出し、彼らのところに遣わす。
それは彼らの目を開いて、暗やみから光に、サタンの支配から神に立ち返らせ、わたしを信じる信仰によって、彼らに罪の赦しを得させ、聖なるものとされた人々の中にあって御国を受け継がせるためである。』
ガラテヤ2:8ーペテロにもみわざをなして、*割礼を受けた者への使徒となさった方が、私にもみわざをなして、異邦人への使徒としてくださったのです。
*割礼を受けた者…ユダヤ人(割礼は、アブラハム契約のしるし)
1:2 ーおよび私とともにいるすべての兄弟たちから、ガラテヤの諸教会へ。
*ガラテヤの初教会…パウロは二度ガラテヤ地方を訪れていることになります。
使徒16:6ー それから彼らは、アジアでみことばを語ることを聖霊によって禁じられたので、フルギヤ・ガラテヤの地方を通った。(第二回伝道旅行の時にガラテヤの教会を立ち上げた)
使徒18:22~23ーそれからカイザリヤに上陸してエルサレムに上り、教会にあいさつしてからアンテオケに下って言った。
そこにしばらくいてから、彼はまた出発しガラテヤの地方およびフルギヤを次々の巡って、すべての弟子たちを力づけた。(第三回伝道旅行)
ガラテヤ4:13ーご承知のとおり、私が最初あなたがたに福音を伝えたのは、私の肉体が弱かったためでした。
『最初』という言葉から、パウロが二度ガラテヤを訪れていることがわかります。
1:3ーどうか、私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。
*父なる神と主イエス・キリスト…三位一体の第一位格と第二位格の神
ヨハネ10:30ーわたしと父とは一つです。
1:4ーキリストは、今の悪の世界から私たちを救い出そうとして、私たちの罪のためにご自身をお捨てになりました。私たちの神であり父である方のみこころによったのです。
*ご自身をお捨てになりました… ヨハネ10:18ーだれも、わたしからいのちを取った者はいません。わたしが自分からいのちを捨てるのです。わたしには、それを捨てる権威があり、それをもう一度得る権威があります。わたしはこの命令を父から受けたのです。」
1:5ーどうか、この神に栄光がとこしえにありますように。アーメン。
すべては『神の栄光のため』です。
詩篇19:1ー天は神の栄光を語り告げ、
大空は御手のわざを告げ知らせる。
詩篇79:9ー私たちの救いの神よ。御名の栄光のために、私たちを助けてください。
御名のために、私たちを救い出し、私たちの罪をお赦しください。
1:6ー私は、キリストの恵みをもってあなたがたを召してくださったその方を、あなたがたがそんなにも急に見捨てて、ほかの福音に移って行くのに驚いています。
*ほかの福音…当時、ガラテヤの教会には、神の恵みを捨ててモーセの律法に逆戻りする律法主義者の伝える偽りの福音が入り込んでいました。
そのような『ほかの福音』に対してみごとにこらえたのが、コリントにある教会でした。
Ⅱコリント11:4ーというわけは、ある人が来て、私たちの宣べ伝えなかった別のイエスを宣べ伝えたり、あるいはあなたがたが、前に受けたことのない異なった霊を受けたり、受け入れたことのない異なった福音を受けたりするときも、あなたがたはみごとにこらえているからです。
1:7ーほかの福音といっても、もう一つ別に福音があるのではありません。あなたがたをかき乱す者たちがいて、キリストの福音を変えてしまおうとしているだけです。
*キリストの福音…1コリント15:2~4ーどんな言葉でわたしが福音を告げ知らせたか、しっかり覚えていれば、あなたがたはこの福音によって救われます。さもないと、あなたがたが信じたこと自体が、無駄になってしまうでしょう。
最も大切なこととしてわたしがあなたがたに伝えたのは、わたしも受けたものです。すなわち、キリストが、聖書に書いてあるとおりわたしたちの罪のために死んだこと、 葬られたこと、
また、聖書に書いてあるとおり三日目に復活したこと、 ケファに現れ、
その後十二人に現れたことです。(新共同訳)
パウロたち使徒たちが宣べ伝えた福音とは異なるものは、すべて『ほかの福音』です。
1:8ーしかし、私たちであろうと、天の御使いであろうと、もし私たちが宣べ伝えた福音に反することをあなたがたに宣べ伝えるなら、その者はのろわれるべきです。
*天の御使い…やがて来る患難時代には、異邦人の救いが終わる直前の中期になると、それまでは伝道することのなかった御使いたちも伝道するようになります。
黙示録14:6~7ーまた私はもうひとりの御使いが中天を飛ぶのを見た。彼は、地上に住む人々、すなわち、あらゆる国民、部族、国語、民族に宣べ伝えるために、永遠の福音を携えていた。
彼は大声で言った。「神を恐れ、神をあがめよ。神のさばきの時が来たからである。天と地と海と水の源を創造した方を拝め。」
1コリント15:2~3とは異なる内容は、パウロたちが宣べ伝えた福音ではなく『ほかの福音』です。
現代の教会では、キリストの『葬り』や『復活』が抜けたり、神の愛やイエスを主とすることに福音を置き換えたり、異なった霊を受けたりすることが増えて来ています。
異端に至っては、中国人女性を再来のイエスだとするおかしな教えまであります。
このような『ほかの福音』を伝える者は、のろわれると聖書は記しています。
*のろわれる…ギリシャ語:アナセマ/ヘブル語:ヘレム
直訳:神の怒りに渡されよ、の意。
神のためにより分けるということ。
良いものは神へのささげ物となり、悪いものは滅ぼされるということ。
1:9ー私たちが前に言ったように、今もう一度私は言います。もしだれかが、あなたがたの受けた福音に反することを、あなたがたに宣べ伝えているなら、その者はのろわれるべきです。
*あなたがたが受けた福音…パウロが『最も大切な福音』として伝えた1コリント15:3~4の『キリストの福音の三要素』のこと。
私たちもどの福音によって救われたのかをもう一度思い出し、吟味する必要があります。なぜなら、『ほかの福音』を宣べ伝えているならば、のろわれてしまうからです。
1:10ーいま私は人に取り入ろうとしているのでしょうか。いや。神に、でしょう。あるいはまた、人の歓心を買おうと努めているのでしょうか。もし私がいまなお人の歓心を買おうとするようなら、私はキリストのしもべとは言えません。
*キリストのしもべ…神の奥義の管理者
1コリント4:1ーこういうわけで、私たちを、キリストのしもべ、また神の奥義の管理者だと考えなさい。
1:11ー兄弟たちよ。私はあなたがたに知らせましょう。私が宣べ伝えた福音は、人間によるものではありません。
1:12ー私はそれを人間からは受けなかったし、また教えられもしませんでした。ただイエス・キリストの啓示によって受けたのです。
*人間によるのではありません…パウロが宣べ伝えたキリストの福音(1コリント15:3~4)は、先輩の使徒たちによるのではなく、直接キリストからの啓示によって受けたものでした。
1:13ー以前ユダヤ教徒であったころの私の行動は、あなたがたがすでに聞いているところです。私は激しく神の教会を迫害し、これを滅ぼそうとしました。
*私の行動…パリサイ派であった頃のパウロは、ステパノを殺すことに賛成の票を投じ、教会を荒らし、家々に入って男女関係なく引きずり出しては投獄していました。
使徒8:1ーサウロは、ステパノを殺すことに賛成していた。
使徒8:3ーサウロは教会を荒らし、家々に入って、男も女も引きずり出し、次々に牢に入れた。
使徒26:9~11ー以前は、私自身も、ナザレ人イエスの名に強硬に敵対すべきだと考えていました。
そして、それをエルサレムで実行しました。祭司長たちから権限を授けられた私は、多くの聖徒たちを牢に入れ、彼らが殺されるときには、それに賛成の票を投じました。
また、すべての会堂で、しばしば彼らを罰しては、強いて御名をけがすことばを言わせようとし、彼らに対する激しい怒りに燃えて、ついには国外の町々にまで彼らを追跡して行きました。
1:14ーまた私は、自分と同族で同年輩の多くの者たちに比べ、はるかにユダヤ教に進んでおり、先祖からの伝承に人一倍熱心でした。
*先祖からの伝承…パリサイ人として、口伝律法をまとめた『ミシュナー』に熱心だったということ。
1:15ーけれども、生まれたときから私を選び分け、恵みをもって召してくださった方が、
*私を選び分け…神の全知全能による選び
使徒9:15~16ーしかし、主はこう言われた。「行きなさい。あの人はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ、わたしの選びの器です。
彼がわたしの名のために、どんなに苦しまなければならないかを、わたしは彼に示すつもりです。」
キリスト者を迫害し、苦しめたパウロは、キリストの福音を伝えるために苦しむことになりました。
預言者エレミヤもまた、生まれる前から神に選ばれた預言者でした。
エレミヤ書1:4~5ー次のような主のことばが私にあった。
「わたしは、あなたを胎内に形造る前から、
あなたを知り、
あなたが腹から出る前から、あなたを聖別し、
あなたを国々への預言者と定めていた。」
ガラテヤ1:16~17節は、使徒9:21~22の間の出来事です。
使徒9:18~21ー するとただちに、サウロの目からうろこのような物が落ちて、目が見えるようになった。彼は立ち上がって、バプテスマを受け、
食事をして元気づいた。サウロは数日の間、ダマスコの弟子たちとともにいた。
そしてただちに、諸会堂で、イエスは神の子であると宣べ伝え始めた。
これを聞いた人々はみな、驚いてこう言った。「この人はエルサレムで、この御名を呼ぶ者たちを滅ぼした者ではありませんか。ここへやって来たのも、彼らを縛って、祭司長たちのところへ引いて行くためではないのですか。」
1:16ー異邦人の間に御子を宣べ伝えさせるために、御子を私のうちに啓示することをよしとされたとき、私はすぐに、人には相談せず、
1:17ー先輩の使徒たちに会うためにエルサレムにも上らず、アラビヤに出て行き、またダマスコに戻りました。
使徒9:22ーしかしサウロはますます力を増し、イエスがキリストであることを証明して、ダマスコに住むユダヤ人たちをうろたえさせた。
1:18ーそれから三年後に、私はケパをたずねてエルサレムに上り、彼のもとに十五日間滞在しました。
*ケパ…ペテロのこと
マタイ16:18ーではわたしもあなたに言います。「あなたはペテロです。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てます。ハデスの門もそれには打ち勝てません。
『シモン』は、ヘブル名、『シメオン』の略称。
『ペテロ』は、ギリシャ名。
『ケパ』は、アラム名。
1:19ーしかし、主の兄弟ヤコブは別として、ほかの使徒にはだれにも会いませんでした。
*主の兄弟ヤコブ…イエスの異父弟の一人。ヤコブも『使徒』のひとりでした。十二使徒のヤコブとは別人。
公生涯のときは、イエスをメシアだと信じていませんでしたが、後にエルサレム教会の教父となりました。
マタイ13:55ーこの人は大工の息子ではありませんか。彼の母親はマリヤで、彼の兄弟は、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではありませんか。
四人の弟たちの中でヤコブとユダの二人は、後に信者となり、それぞれ『ヤコブの手紙』『ユダの手紙』を書き残しています。
1:20ー私があなたがたに書いていることには、神の御前で申しますが、偽りはありません。
*偽りではありません…パウロは主にあって常に真実を語っていました。
ローマ9:1ー私はキリストにあって真実を言い、偽りを言いません。次のことは、私の良心も、聖霊によってあかししています。
1:21ーそれから、私はシリヤおよびキリキヤの地方に行きました。
使徒9:30ー兄弟たちはそれと知って、彼をカイザリヤに連れて下り、タルソへ送り出した。
*キリキヤ…パウロは、キリキヤのタルソ出身。
使徒21:39ーパウロは答えた。「私はキリキヤのタルソ出身のユダヤ人で、れっきとした町の市民です。お願いです。この人々に話をさせてください。」
1:22ーしかし、キリストにあるユダヤの諸教会には顔を知られていませんでした。
*顔を知られていませんでした…ペテロに会いに行ったのは、挨拶を兼ねて知り合うためでした。
1:23ーけれども、「以前私たちを迫害した者が、そのとき滅ぼそうとした信仰を今は宣べ伝えている」と聞いてだけはいたので、
使徒9:21ーこれを聞いた人々はみな、驚いてこう言った。「この人はエルサレムで、この御名を呼ぶ者たちを滅ぼした者ではありませんか。ここへやって来たのも、彼らを縛って、祭司長たちのところへ引いて行くためではないのですか。」
1:24ー彼らは私のことで神をあがめていました。