ダニエル4:1ーネブカデネザル王は、バビロニヤ帝国とその属国すべてに住む諸国民に、書状を書き送りました。
ダニエル4:2ーいと高き神…イスラエルの神のこと。
しるしと奇跡…4章を読み進むうちに明らかになります。
ネブカデネザル王はこの手紙により、自分がなぜ征服した小国の神を礼拝するに至ったかを説明しました。しかしそれは「救いに至る信仰」ではなく、多神教の一つとしての位置づけでした。
ダニエル4:3ーこの箇所は「抒情詩」の形式で書かれていて、ヘブル的概念に満ちています。そのため、異邦人の王であるネブカデネザルが考え出した物とは思えません。おそらくダニエルが下書きを書き、王がそれを承認したのでしょう。
イザヤは終わりの日のことを、こう預言しています。
cf イザヤ2:11ーその日には、高ぶる者の目も低くされ、高慢な者もかがめられ、主おひとりだけが高められる。
ネブカデネザル王に起こったことは、これとにています。王の高慢が砕かれ、主おひとりだけが高められたのです。
ダニエル4:4ーネブカデネザル王が夢を見たのは、自宅で気楽にしており、宮殿で栄えていたときでした。この直前に彼はエジプトを征服し、一大帝国を造り上げ、敵がいない状態にありました。栄華を誇り、安らいでいる時に、恐ろしい夢を見たのです。
ダニエル4:5ー一大帝国を造り上げたのですから、地上には恐れるべき敵はいないはずです。しかしバビロンの王は一つの夢によって、恐れ脅かされたのでした。
ダニエル4:6ーそれで、王はバビロンの知者たちをことごとく呼び寄せ、夢の解き明かしをさせようとしました。2章でも同じように、バビロンの知者たちに夢の解き明かしをさせようとしていました。王は何も学ばなかったのでしょうか?再び神を畏れない無知な知者たちに夢の解き明かしを求めています。
ダニエル4:7ー前回とは違い、王は自分が見た夢の内容を伝えています。しかしバビロンの知者たちは、その解き明かしをすることができませんでした。
cf ダニエル2:4ーカルデヤ人たちは王に告げて言った。ーアラム語で。ー「王よ。永遠に生きられますように。どうぞその夢をしもべたちにお話ください。そうすれば、私たちはその解き明かしをいたしましょう。」
ダニエル4:8ーベルテシャツァル…ダニエルがネブカデネザル王から与えられた名前で、「ベル」とは、バビロンの偶像神のことです。王はダニエルに最高の名前を与えたつもりだったかもしれませんが、ダニエルにとっては決して嬉しいものではありませんでした。
聖なる神の霊があった…ネブカデネザル王は、夢を解き明かすダニエルの賜物が神からのものであることを認めながらも、本当の信仰はありませんでした。相変わらず、多神教の世界にいたのです。
王はダニエルに自分が見た夢を告げました。
ダニエル4:9ー王はダニエルに見た夢の幻を告げ、解き明かしを求めました。
ダニエル4:10ーその幻の内容は、地の中央に非常に高い木がありました。
ダニエル4:11ーそれは成長して強くなり、世界中どこからでも見えるまでになりました。
ダニエル4:12ーその木は豊かに生い茂り、実も豊富で、人にも動物にも休息と食物とを与えていました。
ダニエル4:13ー幻の中で王は、天使が天から降りて来るのを見ました。その天使は、「見張りの者」「聖なる者」と呼ばれています。
ダニエル4:14ー天使はある判決を下します。それは、その木を切り倒し、枝を切り払い、そこに住まう動物と鳥とを追い払え。
ダニエル4:15ーただし、木を完全に切り倒すのではなく、その根株を地に残し、鉄と青銅の鎖をかけて、野の若草の中に置き、天の露にぬれさせて、地の草を獣とともに分け合わせよ。
ダニエル4:16ーその心を人間のこころから獣の心に変え、七つの時をその上に過ごさせよ。
ダニエル4:17ー天使によるこの宣言は、ネブカデネザル王が傲慢になっていたからです。
cf 箴言16:18ー高ぶりは破滅に先立ち、心の高慢は倒れに先立つ。
箴言18:12ー人の心の高慢は破滅に先立ち、謙遜は栄誉に先立つ。
ダニエル4:18ー王は、ベルテシャツァルと名付けたダニエルに夢の幻の解き明かしをするように迫りました。
ダニエル4:19ーダニエルはその幻が王の将来に起こることを示していることを知り、しばらくの間驚きすくみ、おびえていました。王はその解き明かしを早く知りたくて、ダニエルを急かします。ダニエルは慎重に口を開き、ユダヤ人独特の言い回しで「呪いが王の敵に行くように。」と言っています。
ダニエル4:20ー天にまで届く木…ネブカデネザル王のこと。
ダニエル4:21~22ーネブカデネザル王は、バビロンの王として近隣諸国を配下に治め、多くの国民がその配下で住まうほどになりました。
ダニエル4:23ーしかし今、彼は獣のようになり、七年間野の草を食すようになるのです。鉄と青銅の鎖は、獣化妄想になった王が自分を傷つけることがないようにするためです。
ダニエル4:24ーダニエルはこの幻の内容は、いと高き神によるもので、将来王に起こることだと解き明かし始めました。
ダニエル4:25ー王は人間の中から追い出され、獣化妄想に陥り、獣(牛)とともに野の草を食べるようになる。
天の露にぬれ…家の中ではなく、野外に住むようになるということ。
王が悔い改め、神の権威を認めるようになるまでに七年の時がかかります。
ダニエル4:26ー神の判決の中には必ず恵みの要素があります。ここでも木の根株が残されていることから、将来新芽が出ることが分かります。
王が神の主権を認めてへりくだるなら、元の王としての地位に戻ることができます。
ダニエル4:27ーそれゆえ…ダニエルは王の夢の幻を解き明かしした上で、何をなすべきかを助言しました。
①正しい行ないによってあなたの罪を除き…悔い改めにより、神に立ち返ること。
②貧しい者をあわれんで、あなたの咎を除いてください…悔い改めによる信仰の行ないとして、正義と公平に基づく統治を具体的に行なうこと。
そうすれば…これらのことを行なうなら、ネブカデネザル王の繁栄は長く続くという約束の言葉を語りました。
*いと高き方が人間の国を支配し、その国をみこころにかなう者にお与えになる。ー4:25ーは真実です。神はいずれ七年間の患難時代を通して、やがて来る「千年王国=メシア的王国」を神を信じる者にお与えになるからです。
ダニエル4:28ー王の見た夢をダニエルが解き明かしした通りのことが、ネブカデネザル王の身に起こりました。
ダニエル4:29ーそれはダニエルの解き明かしから、12ヶ月後に成就しました。月日が経つにつれ、王はダニエルの助言を忘れてしまったようです。
ダニエル4:30ー王は宮殿の屋上を歩きながら、自らの偉業を誇りました。王がこのように誇ったことは、聖書以外の資料からも確認されています。
ダニエル4:31ーその瞬間、天からの声があり、王の上に神の審判が下りました。「国はあなたから取り去られた。」と。
ダニエル4:32ー人間の中から追い出され…追放されたというより、獣化妄想により自ら人間社会から出て行ったと思われます。
ダニエル4:33ー神の告げられたとおり、王は自分が牛だと思い込み、牛の群れとともに草を食べ、屋外で生活しました。
彼の髪の毛は鷲のようになり、爪は鳥の爪のようになった…髪の毛は濃くなり、爪は伸び放題ということ。これは王が見た夢の中にはなかったことです。
ダニエル4:34ー王が獣化妄想に陥っていた期間は、七年間続きました。自分を「牛」だと思い込んでいたわけですから、その間ずっと王はしたを向いて生活していたわけです。その彼が、遂に目を上にあげて、天を見ました。その瞬間、王に理性が戻ってきました。
ギリシャ語で「人間」を「アンスロポス」といいます。それは「上を見る者」という意味です。
天を見上げ、神を認識出来るか否かが、人間と動物の違いです。
王は神を仰ぎ見た結果、獣化妄想から癒されました。そしてすぐに、神を賛美しました。
その内容は、聖書の他の箇所に記されている頌栄に類似しています。
cf 詩篇145:13ーあなたの王国は、永遠にわたる王国。
あなたの統治は、代々限りなく続きます。
ダニエル4:35ーcf イザヤ40:17ーすべての国々も主の前では無いに等しく、
主にとっては
むなしく形もないものとみなされる。
cf ヨブ記9:12ーああ、神が奪い取ろうとするとき、
だれがそれを引き止めることができようか。
だれが神に向かって、
「何をされるのか。」と言いえよう。
ダニエル4:36ーネブカデネザルが理性を取り戻し、神の主権を認めた時に、王位に復帰しました。それは戦いによってではなく、神の主権によって自然に王位に復帰したのです。しかも以前にもまして、彼は大いなる者となりました。
ダニエル4:37ー神は、高ぶった異邦人の王たちを、へりくだった者とされます。