クリスマスストーリーというと『ベツレヘムの羊飼いたち』に並んで、知られているのが『東方の博士たち』ですが、多くの方々は『三人の博士たちが訪ねて来た。』と思い違いをされています。
博士たちが御子イエスに持って来た『贈り物』が三種類だったというだけで、一人一つずつ持って来たわけではありませんのであしからず!(#^.^#) 彼らはたった三人でテクテクやって来たわけではなく、キャラバン隊でやって来た『ご一行様』でした。
『東方の博士たち』とは…?
いったい『東方』とは、どこでしょう?
おそらく彼らは、アッシリヤ・バビロン地方の学者(呪文師ー占星術師)であったと考えられます。
南ユダ王国が、捕囚の民として引かれて行った先がバビロンでした。そこではダニエル、ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤたちがバビロンの知者、賢者たちに混じって王の宮廷に仕えていました。cf ダニエル書。
ダニエルが残した『ダニエル書』は、2:4~7:28までバビロンの言葉アラム語で記されています。
エズラ記6:1~15もアラム語で書かれています。(この時のダリヨス王はペルシャ人です。)
また民数記24:17には、バビロンの占星術師バラムのことばがあります。
また、バビロン捕囚の間の出来事について記したダニエル書9:24~25には、メシアの誕生の預言が記されています。
これらの書物をバビロンの知者たちが学んでいたのでしょう。その上で、マタイの福音書へと続くのです。
マタイ2:1ーヘロデ王…エサウの子孫にあたるエドム人。BC37~4年にかけて、ローマの元老院からローマ皇帝に従属することを条件に『ユダヤの王』としての地位に就きました。
バビロン捕囚から帰還した民が、ゾロバベルの指揮のもと神殿(第二神殿)を再建しました。しかしその神殿は、規模も小さくみすぼらしいものでした。エドム人であるのに、ユダヤ人の王となったヘロデ大王は、ユダヤ人に恩を売り、暴動を防ぐ意味もあって第二神殿の大規模改修工事をしたのです。
御子イエスの誕生は、歴史的にはBC4年とされていることから、ヘロデ大王の統治の末期に誕生されたと思われます。
東方…このような理由から、東方とはバビロン地方だと思われます。東方で見た星がエルサレムまで導いたとなると、この星は『東→西』に動いたことになります。その距離は約2,000kmもありました。
cf 民数記24:15~17ーそして彼のことわざを唱えて言った。
「ベオルの子バラムの告げたことば。
めのひらけた者の告げたことば。
神の御告げを聞く者、
いと高き方の知識を知る者、全能者の幻を見る者、
ひれ伏して、目のおおいを除かれた者の告げたことば。
17 私は見る。しかし今ではない。
私は見つめる。しかし間近ではない。
モアブのこめかみと、
すべての騒ぎ立つ者の脳天を打ち砕く。
マタイ2:2ーユダヤ人の王…ヘロデ大王は『ユダヤ人の王』としての地位に就いていましたが、彼はユダヤ人ではなく、エドム人でした。ですから「ユダヤ人の王として正規にお生まれになった者がいる。」ということは、脅威であったわけです。
ヘロデ大王はとても猜疑心が強く、王としての自分の地位が危ういと思うと、たとえ相手が息子であろうとも殺してしまいました。ですから、ユダヤ人たちは皮肉って「ヘロデの息子で生まれるよりは、ヘロデの豚で生まれた方が幸せである。」と言っていたほどでした。
東方の博士たちは「ユダヤ人の王としてお生まれになった方を、拝みに来た。」と言っています。
博士たちは、ダニエル書、エズラ記等から『ユダヤ人の王が生まれる』という預言は理解していたと思われますが、ミカ書等の預言書はなかったので『どこで』誕生するかということまではわからなかったのでしょう。王が誕生するとしたら、通常まず考えるのは王宮ですから、それでヘロデ大王を訪ねたのだと思います。
マタイ2:3ーヘロデ大王としては、寝耳に水でした。異邦人である東方の博士たちは、遠く異邦人の地で『ユダヤ人の王の誕生』を察知し、旅の危険を犯してまでも拝みに来ているのに、当のユダヤ人たちは、軍事的にローマ軍に守られ、平和ボケをしているような状態です。博士たちに言われて、恐れ惑っています。
ここで、ベツレヘムの羊飼いたちのことを、ちょっと思い出してみてください。彼らは貧しく、社会から疎外されていました。しかし、東方の博士たちは、はるばる2,000kmもの道のりをキャラバン隊で旅をして来るだけの財力と、ヘロデ大王の宮殿に行き、王に謁見までできる、ユダヤ人である羊飼いたちとは対局にいる人たちでした。
マタイ2:4ー祭司長たち…ダビデ王が祭司たちを24の組に分けた各組の長。cf 1歴代誌24:7~18。
学者たち…律法の専門家たち。
おそらく東方の博士たちとは別室に祭司長や学者たちを集めて問いただしたのでしょう。
マタイ2:5ー祭司長や律法学者たちは、慌てて預言書を調べたのでしょう。普段は預言書よりも律法の書『トーラー(モーセ五書)』に熱心な人たちですから…。
マタイ2:6ーそしてメシア誕生約750年も前に書かれたミカ書5:2のみことばをもって「ユダヤのベツレヘムです。」と答えました。
わざわざ『ユダヤの』と付けているのは、ベツレヘムという地名はユダの相続地以外に、ゼブルンの地にもあったからです。cf ヨシュア記19:15。
マタイ2:7ーひそかに博士たちを呼んで…なぜ『ひそかに』なのでしょう?何かまずいことでもあるのでしょうか?
ヘロデ大王は、博士たちが東方で見たという星の出現の時間を聞き出しました。おそらく誕生後にベツレヘムに到着するように、時間的猶予があったものと思われます。それで後にヘロデ大王は「ベツレヘムにいる2歳以下の男の子を皆殺すように。」と命じているわけです。cf マタイ2:16。
マタイ2:8ーヘロデ大王は、ユダヤ人の王の誕生の地はベツレヘムであることを博士たちに告げ、「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」と送り出しています。
イスラエルの王ダビデの誕生もベツレヘムでしたから、そこはある意味特別な地だったはずですが、信仰からはずれ、平和ボケに陥り、目先の生活だけを楽しむようになると繋がってこないのでしょうね。
異邦人である東方の博士たちにユダヤ人の王のことを調べさせ、わかったことをユダヤ人(ヘロデ大王はエドム人ですが…)に知らせる…まるでパウロの信仰のようです。
cf ローマ11:11bー彼らの違反によって、救いが異邦人に及んだのです。それはイスラエルにねたみを起こさせるためです。
cf ローマ11:14ーそして、それによって何とか私の同国人にねたみを引き起こさせて、その中の幾人でも救おうと願っているのです。
私の同国人…ユダヤ人。
マタイ2:9ー博士たちはヘロデ大王から聞いたとおり、ベツレヘムを目指して出かけました。ヘロデ大王が言ったことばは、ミカ書5:2にみことばによるものですから、博士たちは間接的ではあるにせよ『神のみことば』に従ったわけです。
すると、東方で見た星が再び彼らを先導しました。
みとこばに従い、一歩踏み出すと神が導いてくださるのです!
彼らを東方からエルサレムへ(東から西へ)導いた星が、今度はエルサレムからベツレヘムへ(北から南へ)導きました。そして、幼子がおられる所でとどまったとあります。
このような動きをする『星』とは、シャカイナグローリーです 。
マタイ2:10ーですから、博士たちは『その星を見て、この上もなく喜んだ。』のです。
マタイ2:11ーそしてその家の中に入り、母マリヤと共におられる幼子を見て、ひれ伏して拝んでいます。これが最初の異邦人による礼拝です。
博士たちの贈り物は、どれも王に捧げる贈り物としてふさわしい高価な物でした。しかしそれらには別な意味もありました。
黄金…神の栄光。キリストの神性。『王』への贈り物。*再臨のキリストは『王』として来られます。
乳香…きよさ。義。乳香は祭司が捧げる神の御前に芳しい香りであり、信者の祈りも意味します。*キリストは現在、天にて『大祭司』としてとりなしてくださっています。
没薬…没薬は死体の防腐剤として用いられたことから、キリストの死。cf ヨハネ19:39。
*神の厳しいお告げを告げた預言者は、しばしば殺されました。キリストの初臨はモーセのような『預言者』としての働きもありました。
*王、祭司、預言者はすべて『油注がれた者』でした。
*神は、私たちが神を無視して生きる『罪人』であるにも関わらず、その罪を赦すために、大事なひとり子イエスを与えてくださいました。ですからクリスマスには、私たちも大切な人に愛を込めて贈り物をするのです。
マタイ2:12ー博士たちはおそらく、ヘロデ大王に言われたとおり王宮に戻り、幼子がどこにいるのか詳しく報告するつもりでいたでしょう。しかし、夢で『ヘロデのところへ戻るな。』と戒めを受けたので、別な道から帰って行きました。
王の命令と夢の内容とどちらに重きをおくのか…?
なぜ博士たちは、夢のお告げに聞き従うことが出来たのでしょう?
おそらくダニエル書にそのヒントがあると思います。ダニエルはバビロンの王ネブカデネザルが見た夢そのものを言い当て、その解き明かしをしています。それはバビロンの知者・賢者たちにはできなかったことです。cf ダニエル書2章。
そのダニエルが書き残した書から、ユダヤ人の王の誕生を知り、『星』に先導されてここまで来たのですから、彼らは夢のお告げがダニエルの神からのものであることを知っていたのです。
そのお告げに従って、安全に自分の国に帰って行ったのです。