神はだれと結んだの…?
聖書全体の流れを理解する「鍵」とは…?
信仰を持ってある程度の年数の経った信者には、ぜひこれらの質問には答えられるほどに成長していて欲しいと願います。
旧約・新約の『約』とは『契約』のことであり、【主】とは『契約の神』の意味ですが、教会ではあまり『神の結ばれた契約』について語られてはいないようです。
神様は旧約聖書の中で『八つの契約』を結ばれています。
…というと、多くの方が「えっ!? 『新しい契約』は新約聖書ででしょ?」と思われるかもしれませんが、『新しい契約』も旧約聖書のエレミヤ書31:31で結ばれ、それを神の小羊としてのご自身の血をもって承認し、有効とされたのが、新約聖書に記されている『キリストの十字架』の出来事です。
エレミヤ31:31ー見よ。その日が来る。ーー主の御告げーーその日、わたしは、イスラエルの家とユダの家とに、新しい契約を結ぶ。
私たち異邦人信者が今まで信じて疑わなかったことの一つに、『新しい契約は、神とクリスチャンが結んだ』という教えがありますが、これもエレミヤ書31:31によると『神は、二つの家ーイスラエルの家とユダの家ーと新しい契約を結ぶ』とあります。
つまり、異邦人信者であるクリスチャンとではなく、イスラエルの民と結ばれたということなのです。
これは、Biblical Covenant(聖書的契約)の立場で聖書を読んで、初めて理解できる内容ですので、驚かれている方も多いと思いますが、是非最後まで目を通して頂き、ご自分で聖書を開いて確認していただければと思います。
普通、契約というのは常に最新のものが「有効」と見なされるので、「旧い契約」が記されている聖書を「旧約聖書」、「新しい契約」が記されている聖書を「新約聖書」と言います。
また、日本人は『契約』という概念が欧米諸国に比べて希薄であり、建前上の『約束事』のような軽い意味で理解している方も多いのではないでしょうか?
しかし、『契約』というのは相互間の取り決め事であり、契約内容を果たす責任が伴うものなのです。
ですからこれら八つの契約を
①神がだれと結ばれたか。
②どのような条件で結ばれたか。
というのがとても重要になってきます。この2つの点を間違えて理解してしまうと、聖書全体の解釈が変わってしまいます。
そして、どの契約が無条件契約で私たち異邦人にも関係があり、どの契約が片務契約で人間側には責任が無いのか、さらにどの契約が終わり、どの契約が現在でも有効なのかを正しく理解できていないからこそ、多くの信者が迷走し、様々な強調点の相違から多くの教派ができてきたと言えるでしょう。
八つの契約というのは、
①エデン契約(条件付契約)ー契約の当事者:神と人類代表としてアダム
契約締結時の人口はアダム一人だけ、締結後妻エバが造られました。つまり、最初の人アダムは『神の子』として、神の命令・みことばを人に伝えるという責務がありました。
創世記2:17ーしかし、善悪の木からは取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ。」
このエデン契約の違反によって「罪と霊的死」が人類に入りました。
ローマ5:12ーそういうわけで、ちょうどひとりの人によって罪が世界にはいり、罪によって死がはいり、こうして死が全人類に広がったのと同様にーそれというのも全人類が罪を犯したからです。
②アダム契約ー契約の当事者:神と人類代表としてアダム
(内容的には、男性代表:アダム/女性代表エバ、の意味を含みます)
多くの人が罪を犯した『罰』としてエデンの園を追放されたと誤解しています。
しかし、実際は『罰』ではなく、神の恵みなのです。
創世記3:24ーこうして、神は人を追放して、いのちの木への道を守るために、エデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。
罪を犯し、神を神としなくなり、自分が事の善悪を決めるようになった人間が、永遠に生きることのないように『いのちの木への道を守るため』に人をエデンの園から出されました。
このアダム契約によって、人類に『肉体の死』が入りました。
しかし、後に神は、その『いのちの木へ至る道』を回復してくださっています。
それが、私たちの罪のために十字架で死なれ、(罪の無い者として)墓に葬られ、聖書に従って三日目に復活し、死に打ち勝ったイエス・キリストです。
ヨハネ14:6ーイエスは彼に言われた。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれひとり父のみもとに来ることはありません。
③ノア契約ー契約の当事者:神と洪水後の人類代表としてノア(人口は8人)
洪水から救われたノアの三人の息子から現在の人間の先祖が誕生しています。
創世記9:18~19ー箱舟から出て来たノアの息子たちは、セム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。この三人がノアの息子で、彼らから全世界の民は分かれ出た。
〜ノアの三人の息子たち〜
①セム…東洋系人種(黄色人種)の先祖。霊的資質が与えられました。アブラハムの家系。
*西洋では、反ユダヤ主義を「アンチセミティズム」と言います。
②ハム…アフリカ系人種(黒人)の先祖。音楽や運動能力が与えられました。
③ヤペテ…ヨーロッパ系人種(白人)の先祖。科学的思考能力が与えられました。
*これら三つの契約は、神が人類全般と結んだ契約です。
ですから、ユダヤ人だけでなく異邦人も含まれます。ユダヤ人であろうと、異邦人であろうと、人は『霊的に死んだ状態で誕生し、ごく一部の例外を除いては、人はみなやがて肉体の死を迎える』からです。
1コリント2:14ー生まれながらの人間は、神の御霊に属することを受け入れません。それらは彼には愚かなことだからです。また、それを悟ることができません。なぜなら、御霊のことは御霊によってわきまえるものだからです。
ヘブル9:27ーそして、人間には、一度死ぬことと死後にさばきを受けることが定まっているように、
*一部の『例外』とは、旧約時代のエノクとエリヤの二人は、肉体の死を経ずに天に挙げられました。また、これから起こる『携挙』に与る人々も肉体の死を経ずに天に挙げられます。
キリストの初臨時や初代教会時代には、ラザロややもめの一人息子など肉体の死からよみがえらせていただいた人々がいましたが、彼らはその後再び肉体の死を迎えていますから、二度死を経験したことになります。
④アブラハム契約ー契約の当事者:神とアブラハム(後に、イサクーヤコブー十二人の息子たちへと継承され、イスラエル民族となる)
*聖書の骨子と言われる重要な『契約』!
契約の条項は三つ:⑴子孫、⑵土地、⑶祝福
⑤モーセ契約(条件付契約)ー契約の当事者:神とイスラエルの民(契約の仲介者:モーセ)
いわゆる『律法』のことですが、『モーセの十戒』だけではなく全部で613あり、守るなら613全て守る義務があります。
その内訳は、248の積極的命令と365の禁止命令です。
条件付契約のためどちらかが違反をすれば、この契約は無効になります。
エレミヤ31:32ーその契約は、わたしが彼らの先祖の手を握って、エジプトの国から連れ出した日に、彼らと結んだ契約のようではない。わたしは彼らの主であったのに、彼らはわたしの契約を破ってしまった。ーー主の御告げーー
*エジプトの国から連れ出した日に、彼らと結んだ契約…モーセ契約、律法。
*彼らはわたしの契約を破ってしまった…イスラエルの民が『モーセ契約』を破った。
ガラテヤ3:10ーというのは、律法の行いによる人々はすべて、のろいのもとにあるからです。こう書いてあります。「律法の書に書いてある、すべてのことを堅く守って実行しなければ、だれでもみな、のろわれる。」
ヤコブ2:10~11ー律法全体を守っても、一つの点でつまずくなら、その人はすべてを犯した者となったのです。
なぜなら、「姦淫してはならない」と言われた方は、「殺してはならない」とも言われたからです。そこで、姦淫しなくても人殺しをすれば、あなたは律法の違反者となったのです。
律法のすべてを守り行うことができなかった神の民イスラエルに代わって、神の御子がイスラエルのユダ族から誕生され、人の子として律法のすべてを守り、成就してくださいました。
ローマ10:4ーキリストが律法を終わらせられたので、信じる人はみな義と認められるのです。
⑥土地の契約ー契約の当事者:神とイスラエルの民
神は無条件契約の『アブラハム契約』で、アブラムに「あなたとあなたの子孫に土地を与える」と約束されていながら、『モーセ契約』では律法に従順なら祝福し、不従順なら呪いと裁きが彼らを襲い、捕囚の民となり土地を失いました。
この矛盾を解くのが『土地の契約』です!
土地の所有権は、アブラハム契約によってユダヤ人たちのものですが、土地の居住権に関しては、神の民が神の命令に従順か否かにかかっています。
土地の契約は、『アブラハム契約』の三つの条項の中の『土地』に関してだけを取り出して、再契約したものです。
その『約束の地:カナン』を受け継ぐのは、信仰を持ったユダヤ人たち、『千年王国』という『約束の地の異邦人の地所』に入るのが、信仰を持った異邦人たちであり、さらに異邦人の信者の中で『忠実なしもべ』とみなされた者が『異邦人の地所を受け継ぐ』ことになります。
千年王国に入るだけなのか、地を受け継ぐことができるのかを決めるのが、携挙の後に行われる『キリストの御座の裁き』です。それはまた、この世での信仰生活の決算報告でもあります。
『アブラハム契約』の条項の中の『子孫』に関することを取り出して契約したもの。
この地上における『神の御国』の王は、アブラハムーイサクーヤコブーユダーダビデの家系から出ることの約束です。
Ⅱサムエル記7:11~17は、14節で『もし彼が罪を犯すときは』とあるので、ダビデの子孫として王位を受け継いだソロモンに対するもの。
1歴代誌17:7~14には、『もし彼が罪を犯すときは』が無いので、罪の無い方として十字架の死と葬り、三日目に復活されたダビデの子孫として来られた神の御子イエス・キリストに対するもの。
創世記3:15で約束された『女の子孫』として来られるメシアは、ダビデの子孫として来られるお方です。イザヤは『女の子孫』が『処女から生まれる』ことを預言しており、ルカ1:26でその処女がガリラヤのナザレの町のマリヤであることが記されています。
そのマリヤの系図がルカ3章にあり、マリヤから生まれるイエスが『ダビデの子孫』であることを証明しています。
*マタイ1章の系図は養父ヨセフのものであり、マタイの系図から「イエスがダビデの子孫である」と言うことはできません。
マタイの系図からわかることは、二つ。
⑴養父ヨセフとイエスの間に血縁関係はないこと。
⑵ダビデまでの間に、四人の異邦人女性の名が記されていることにより、ダビデの子孫として生まれるメシアには異邦人の血も入っている遠い親族となっていること。
このことにより、異邦人のための『メシア』、買い戻しの権利を有する者であることがわかります。
⑧新しい契約ー契約の当事者:神とイスラエルの二つの家ー『北イスラエルと南ユダ』
アブラハム契約の『祝福』の条項が発展したものであり、御子イエスを信じた異邦人は『神の子ども』として受け入れられた結果、この『祝福』に与る者とされました。
ヨハネ1:12ーしかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。
キリストの十字架で流された血により承認され、有効となりました。
つまり、キリストの十字架により、古い契約である『モーセ契約』がイスラエルの民にとって『無効』となり、エレミヤ31:31で結ばれた『新しい契約』が『有効』となったのです。
*これら五つの契約は、神がイスラエルと結んだ契約です。
*神が「異邦人と結ばれた契約」は、一つもありません。
これら「八つの契約」の中で、エデン契約とモーセ契約の二つは、「条件付契約」でした。←*過去形!
条件付契約ー人間の側にも責任が与えられています。
神が与えられた条件「もし〜するならば」ということを守れば、祝福が来ます。
しかし、契約条項に違反した場合は、裁きが下ることが多いのです。
つまり、神が一方的に「わたしは〜する」という形式で結ばれた契約のことで、神の恵みによって祝福が保証される契約です。
中には契約の当事者が実行すべき条項も含まれますが、目的は「神の栄光」であって、祝福を得るための条件ではありません。
奉仕とは、神の恵みに対する感謝の心から行なうべき行為であり、喜びの伴うものです。
そして更に恵みなのは「無条件契約」では、人間側がどんなに失敗して罪を犯したとしても、神がその契約を破棄されることはない!ということです。
ここに神の愛と忍耐があり、“God is faithful.” と言える理由なのです。
だからこそ、私たちはこの神に栄光を帰するのです!アーメン。
六つの無条件契約をもう少し詳しく見てみると…
②アダム契約ーアダムが罪を犯した直後の契約。「原始福音」が語られています。
創世記3:15ーわたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。
彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。
つまり、アダムの妻エバが産む「女の子孫からメシアが誕生する」というものです。
③ノア契約ー洪水後の契約であり、しるしとして「虹」が与えられました。
今でも虹がかかるのは、無条件契約で破棄されていない証拠です。
④アブラハム契約ー甥のロトと別れた後に結ばれた契約で、ポイントは三つ…「土地」「子孫」「祝福」。
*神に忠実なら祝福が、不忠実なら裁きが来ますが、将来必ず成就する契約であり、黙示録へと続いていくものです。
聖書理解に不可欠な重要な契約です。
⑥土地の契約ーアブラハムの子孫であるイスラエルの民との契約。
成就するのは、やがて訪れる「千年王国」にて。その時、神が約束された面積をすべて、復活したアブラハム、イサク、ヤコブとその子孫であるユダヤ人が受け継いで、住むことになります。
⑦ダビデ契約ーダビデの子孫からメシアが誕生する、ダビデの王国は永遠に続くという契約。マタイ1章やルカ3章のイエスの系図を見れば、メシア誕生の契約が守られたことが分かります。そのメシアによって治められる王国の成就は、将来必ず起こる「千年王国」です。
千年王国でのイスラエルの王として復活したダビデが、異邦人諸国にもそれぞれ王が立てられ、すべての王たちの王として地上再臨後のイエスが着座されます。
⑧新しい契約ーモーセ契約(律法)に対し「新しい契約」であり、神がイスラエルと結ばれたものです。仲介者はイエス。
*神が教会と結ばれた契約ではありません。
神がイスラエルと結ばれた契約(全五つ)の中で、条件付契約は「モーセ契約」だけです。残りの四つの契約は「無条件契約」なので、字義通り解釈すべき「永遠の契約」です。
時間の経過やイスラエルの不信仰による罪のゆえに破棄されるものではありません。
もし、イスラエルの不信仰による罪のゆえに破棄されたのだとしたら、私たち信者もいつ救いを失うかわからないことになり、『救いの確信』を得ることは不可能になります。また、キリストの十字架の贖いが恵みであるのにもかかわらず、『良い行い』で救いを完成しようとするならば、十字架のみわざを『不完全なもの』と見なすことになります。
キリストの福音を信じる者はだれでも、たましいの救いを得ているのであって、その救いを失うことはありません。
肉の弱さによる『不信仰』は、悔い改めなければ肉体的な責任が求められ、尚且つ、キリストの御座の裁きで決まる御国での報酬が減ることになるのです。
これら八つの契約に基づいて聖書を読むことは、創世記〜黙示録までの聖書全体の流れを理解するのにとても役立ちます。
ヘブル5:12ーあなたががたは年数からすれば教師になっていなければならないにもかかわらず、神のことばの初歩をもう一度だれかに教えてもらう必要があるのです。あなたがたは堅い食物ではなく、乳を必要とするようになっています。
いつまでも点と点、魚の切り身のような曖昧模糊なみことばの解釈ではなく、全体の中で調和するような明確な解釈ができる『霊的に成長した者』『成熟した霊的おとな』としての信仰の歩みができますように。