イエスの公生涯は仮庵の祭りの頃、ヨルダン川でバプテスマのヨハネからバプテスマを受けられた時から始まりました。
「公生涯は、過越の祭りで始まり、過越の祭りで終わった。」と言われるのは、バプテスマから半年後の過越の祭りで、エルサレムの都に上られた時に本格的にメシアとして公にご自身を現わされたことによるのでしょう。
秋の仮庵の祭りの頃のバプテスマから、春の過越の祭りまでガリラヤ地方で過ごされた半年間は、ガリラヤ地方での準備期間と言えるでしょう。
その半年の間に、後に『使徒』となる弟子たちを集め、訓練を開始されました。
バプテスマから最初の一週間で集められた『弟子たち』は、
①ヨハネと②アンデレ
③ペテロ
④ピリポと⑤ナタナエル(別名:バルトロマイ)
公生涯七日目の『カナの婚礼』での奇蹟の目撃者は、この五人の弟子たちです。
その後、
⑥ヨハネの兄弟ヤコブ
マタイ4:21ーそこからなお行かれると、イエスは、別のふたりの兄弟、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、父ゼベダイといっしょに舟の中で網を繕っているのをご覧になり、ふたりをお呼びになった。
の計六人であり、七番目の弟子となったのが『マタイ』です。
マタイ9:9ーイエスは、そこを去って道を通りながら、収税所にすわっているマタイという人をご覧になって、「わたしについて来なさい」と言われた。すると彼は立ち上がって、イエスに従った。
*そこを去って…マタイ9:1から『ご自分の町=カペナウム』での出来事であることがわかります。更に、並行記事のマルコ2:1~12によると、家の屋根をはがして、中風の人をつり降ろして癒していただいた所であることがわかります。
ヨハネ2:12ーその後、イエスは母や兄弟たちや弟子たちといっしょに、カペナウムに下って行き、長い日数ではなかったが、そこに滞在された。
マタイ9:1ーイエスは舟に乗って湖を渡り、自分の町に帰られた。
マルコ2:1ー数日たって、イエスがカペナウムにまた来られると、家におられることが知れ渡った。
*道を通りながら…『収税所』があることから、通行税を取るためのメイン通りだと思われます。
*すわっているマタイ…人々が『行き交う』中で、その場から動かずにじっと『すわっている』マタイ(アルパヨの子レビ)。
この対比は、あたかも彼の人生の様子、
①行き交う人々のような自由は俺にはない。一生このまま取税人として『罪人』として嫌われて生きていくのか…という『あきらめ』と
②いいや、このような仕事から離れて『真っ当な人生』をつかまなくてはいけない!…という二つの思いに板ばさみになり、そこから『動けないでいる』マタイの心を表しているかのようです。
*ご覧になって…そんな彼に、イエスは『目を留められ』ました。
人々はマタイの存在すら気にも留めないか、留めたとしても、それは同胞から税を取り立て、ローマ政府に収める憎い奴というような冷たい視線でした。
しかしイエスは彼らとは違い、優しい眼差しを向け、声をかけられました。
*「わたしについて来なさい。」…これは今日も主を信じる人々に呼びかけられていることばです。私たちがついて行くべきお方は、キリスト・イエスであって『人間』ではありません。
あなたはクリスチャンとして、誰の後をついて行っていますか?
イエスですか?
それとも…マリヤですか?法王ですか?神父ですか?牧師ですか?宣教師ですか?伝道師ですか?
ガラテヤ1:10ーいま私は人に取り入ろうとしているのでしょうか。いや。神に、でしょう。あるいはまた、人の歓心を買おうと努めているのでしょうか。もし私がいまなお人の歓心を買おうとするようなら、私はキリストのしもべとは言えません。
ヨハネ21:22ーイエスはペテロに言われた。「わたしの来るまで彼が生きながらえるのをわたしが望むとしても、それがあなたに何のかかわりがありますか。
あなたは、わたしに従いなさい。」
使徒5:29ーペテロをはじめ使徒たちは答えて言った。
「人に従うより、神に従うべきです。
*すると、彼は立ち上がって、イエスに従った…「わたしについて来なさい。」というイエスのことばに、マタイは心の迷いが吹っ切れたのでしょう。すぐさま、すわっていた所から『立ち上がり』、イエスに従いました。これがマタイの決断であり、行動です。
救いは、神からの招きを受け、自ら決断し、行動することが求められています。
愛の神だからといって、無条件にすべての人間を救われるのではなく、神の招き(恵み)に、自ら同意し(応答する自由が与えられている)、信仰告白をし、バプテスマを受ける(行動)ことが求められているのです。
マタイは、それをしました。
その結果、彼は『七番目の弟子(後に十二使徒の一人)』となりました。
マタイ9:10ーイエスが家で食事の席に着いておられるとき、見よ、取税人や罪人が大ぜい来て、イエスやその弟子たちといっしょに食卓に着いていた。
*取税人や罪人…ひとくくりのことばとして扱われています。
『取税人』は、同胞のユダヤ人たちから税を集め、ローマ政府に収めるのが仕事でしたが、自分の取り分を上乗せして私腹を肥やしていたので、人々から嫌われていました。
また、律法に従っていない者として『罪人』というレッテルを貼られ、「ローマの犬」と呼ばれる職業でした。
*食卓についていた…おそらく、マタイが喜びのあまりイエスとその弟子たちを食事に招いたのでしょう。律法では、取税人は同じ取税人仲間か娼婦などの罪人とだけ、交際が許されていましたから、マタイが彼らを招待したのはごく自然なことです。
その彼らと共に、イエスと六人の弟子たちは食卓についておられました。
共に食事をするというのは、会話を生み出し、主との『交わり』を意味します。
マタイ9:11ーすると、これを見たパリサイ人たちが、イエスの弟子たちに言った。「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人といっしょに食事をするのですか。」
*パリサイ人…民の指導者。モーセの律法(記述律法)だけでなく、人々が後から付け足した口伝律法の権威も認めていました。口伝律法をも守ることによる『行動義認』の人々でした。その起源は『ハヌカの祭り』とされています。
パリサイ人たちは、メシアは自分たちと同じパリサイ派の中から出てくること、モーセの律法だけでなく、口伝律法の権威も認めると信じていましたから、取税人や罪人たちと『交わり』をするようなイエスがメシアであるはずがないと思っていたのです。
マタイ9:12ーイエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です。
*医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です…自分は元気だ、丈夫だと思っている人は、医者を必要としないのと同じように、『自分は口伝律法をも権威を認め、守っている正しい人間だ』と思っている人には『罪』はわかりません。
救われるには、自分は為すべき正しいことを知っていても、行うことのできない『罪人』だという自覚が必要なのです。
イエスは出会ったサマリヤの女に罪の自覚を促されました。
ヨハネ4:16ーイエスは彼女に言われた。「行って、あなたの夫をここに呼んで来なさい。」
マタイ9:13ー『わたしはあわれみは好むが、いけにえは好まない』とはどういう意味か、行って学んで来なさい。わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招くために来たのです。」
*あわれみ…内面的なもの。動機。同情心。愛。パリサイ人たちに欠けていたもの。
*いけにえ…外面的なもの。律法による行い。律法を守れない人々を裁く思いが芽生えやすい。
*わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招くために来た…イエスは『自己義認』をしているパリサイ人たちを招くために来たのではなく、律法を知ってはいても守れない罪人であるという自覚を持った人々、社会的弱者を招くために来られたメシアなのです。
私はこのイエスとパリサイ人との会話を側で聞いていたであろうマタイは、どんな思いでいたのだろうと想像します。
今までもこのパリサイ人のような扱いを嫌というほどされてきたことでしょう。
今までは取税人や罪人たち以外、誰も自分をかばい、慰めてくれる人はいなかったでしょう。
しかし、今、イエスと六人の弟子たちは自分の招待に応じて食事に来てくれただけでなく、自分を裁くパリサイ人に向かって反論してくださっている。
そのやりとりを聞いているうちに「わたしに従って来なさい」というイエスの命令に、従って行って大丈夫なんだ!という確信が持てたのではないかと思うのです。
罪人扱いをされてないペテロやアンデレ、ヨハネやヤコブたち兄弟、ピリポやナタナエルとは比べることができないほど、マタイにとっては大きな変化でしたから。
取税人マタイは、のちに『十二使徒』として任命を受けます。
マタイ10:2~4ーさて、十二使徒の名は次のとおりである。まず、ペテロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、
熱心党員シモンとイエスを裏切ったイスカリオテ・ユダである。
キリストとの個人的出会いは、その後のその人の人生を大きく変えることになります。
それはどれほどの犠牲が伴おうとも、それに勝る祝福があることなのです。
今まだイエスを信じるということに迷いを感じておられる方がいらしたら、ぜひこのマタイの変化を伝えてあげてください。
信じる者は、神に愛される神の子どもとなれるのですから♡
ヨハネ1:12ーしかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。
ヨハネ3:16ー神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。
それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。