テトスへの手紙は、異邦人への使徒となったパウロが、異邦人信者テトス(ギリシャ人ーガラテヤ2:3)個人に宛てた手紙ですが、1テモテへの手紙同様、教会運営に対する教えが書かれているため、『牧会書簡』と呼ばれています。
異邦人教会として宣教していくために必要な教えがたくさん書かれています。
テトス1:1ー神のしもべ、また、イエス・キリストの使徒パウロ――私は、神に選ばれた人々の信仰と、敬虔にふさわしい真理の知識とのために使徒とされたのです。
*イエス・キリストの使徒パウロ…パウロは『異邦人のための使徒』として、キリストによって召されました。
ガラテヤ2:7b~8ー私が割礼を受けない者への福音をゆだねられていることを理解してくれました。
ペテロにみわざをなして、割礼を受けた者への使徒となさった方が、私にもみわざをなして、異邦人への使徒としてくださったのです。
*神に選ばれた人々の信仰と、敬虔にふさわしい真理と知識とのため…パウロが使徒として選ばれた理由。
救われた者としての信仰の歩みをするには、パウロ書簡の学びは必要不可欠です。
テトス1:2ーそれは、偽ることのない神が、永遠の昔から約束してくださった永遠のいのちの望みに基づくことです。
*偽ることのない神…聖書の神はご自分の約束を忘れることなく、すべて成就してくださる『真実な神』です。
*永遠の昔…天地創造前から、の意。
テトス1:3ー神は、ご自分の定められた時に、このみことばを宣教によって明らかにされました。私は、この宣教を私たちの救い主なる神の命令によって、ゆだねられたのです――このパウロから、
*ご自分の定められた時…『仮庵の祭り』で誕生され、『過越の祭り』で十字架で死なれ、『初穂の祭り』で復活され、『七週の祭り』でもうひとりの助け主としての聖霊を与えてくださったのは、すべて『定められた時』だったのです。
ガラテヤ4:4ーしかし定めの時が来たので、神はご自分の巫女を遣わし、この方を、女から生まれた者、また律法の下にある者となさいました。
マタイ5:17ーわたしが来たのは律法や預言者を廃棄するためだと思ってはなりません。廃棄するためにではなく、成就するために来たのです。
*この宣教を〜ゆだねられた…パウロの確信。パウロが宣べ伝えたのは『福音の三要素』。
テトス1:4ー同じ信仰による真実のわが子テトスへ。父なる神および私たちの救い主なるキリスト・イエスから、恵みと平安がありますように。
*同じ信仰…パウロが宣べ伝えた福音を土台とする『信仰の一致』。
パウロが宣べ伝えた福音とは異なることを宣べ伝えると、のろわれると聖書は記しています。
ガラテヤ1:8~9ーしかし、私たちであろうと、天の御使いであろうと、もし私たちが宣べ伝えた福音に反することをあなたがたに宣べ伝えるなら、その者はのろわれるべきです。
私たちが前に言ったように、今もう一度私は言います。もしだれかが、あなたがたの受けた福音に反することを、あなたがたに宣べ伝えているなら、その者はのろわれるべきです。
*真実のわが子テトスへ…この手紙の宛先。
パウロの伝道によって、テトスは信仰に入りました。
テトス1:5ー私があなたをクレテに残したのは、あなたが残っている仕事の整理をし、また、私が指図したように、町ごとに長老たちを任命するためでした。
パウロが、テトスをクレテに残した理由。
①残っている仕事の整理をするため…新しく信仰に入った者たちを教え、導くこと。
マタイ28:20aーまた、わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。
②パウロの指図に従いクレテの町ごとに長老たちを任命するため
*長老…1テモテ3:1の『監督』と同じ職。教会の指導的立場。
*私が指示したように…パウロは教会の指導者の資質を、テモテとテトスそれぞれに指示を与えています。
今日の教会も、このパウロの指示に従う必要がありますね。
テトス1:6ーそれには、その人が、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、その子どもは不品行を責められたり、反抗的であったりしない信者であることが条件です。
【長老に求められる資質】
❶非難されるところがなく…いきなりハードルが高いですが、神の教会に使える者としてふさわしい人格が求められています。
❷ひとりの妻の夫であり…聖書的な結婚は『一夫一婦制』です。
創世記1:24ーそれゆえ、男はその父母を離れ、妻と結び合い、ふたりは一体となるのである。
したがって、複数の妻を持つ者、独身者、同性愛者、また『一人の夫の妻であり』とは書かれていないことから、女性も長老の職に就くことはできません。
1コリント14:34ー教会では、妻たちは黙っていなさい。彼らは語ることを許されていません。律法の言うように、服従しなさい。
❸その子どもは不品行を責められたり、反抗的であったりしない信者…既婚者であっても、子どもがいない者は長老にはなれません。
子どもがいてもまだ幼子や未信者であっては、長老になるにはふさわしくありません。
パウロは『長老の条件』として、これらのことを命じています。
テトス1:7ー監督は神の家の管理者として、非難されるところのない者であるべきです。わがままでなく、短気でなく、酒飲みでなく、けんか好きでなく、不正な利を求めず、
*神の家…教会。その管理者が『長老』『監督』。
❹わがままでなく
❺短気でなく
❻酒飲みでなく
❼けんか好きでなく
❽正な利を求めず
ここまでは、否定的な条件。
テトス1:8ーかえって、旅人をよくもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、敬虔で、自制心があり、
①旅人をよくもてなし
②善を愛し
③慎み深く
④正しく
⑤敬虔で
⑥自制心があり
テトス1:9ー教えにかなった信頼すべきみことばを、しっかりと守っていなければなりません。それは健全な教えをもって励ましたり、反対する人たちを正したりすることができるためです。
⑦教えにかなった信頼すべきみことばを、しっかりと守っている人 …その目的は、『健全な教えをもって励ましたり、反対する人たちを正したりすることができるため』です。
テトス1:10ー実は、反抗的な者、空論に走る者、人を惑わす者が多くいます。特に、割礼を受けた人々がそうです。
*反抗的な者、空論に走る者、人を惑わす者…これらはみな、『偽教師たち』の特徴です。
みことばに反抗し、持論を展開し、聖書には書かれていないことや耳障りの良いことだけを語り、人を惑わすのが『偽教師』です。
*割礼を受けた人々…ユダヤ人のこと。当時の『偽教師』たちは、ユダヤ人だったことがわかりますが、『特に』とあることから異邦人(クレテの人々)の中にも偽教師の教えの教えを受けて感化された人々がいたことがわかります。
テトス1:11ー彼らの口を封じなければいけません。彼らは、不正な利を得るために、教えてはいけないことを教え、家々を破壊しています。
『偽教師』たちの教えに対し、厳しく対処する必要があります。
彼らの目的は『不正な利を得るため』であり、その活動を許容することは、家々を破壊するからです。
テトス1:12ー彼らと同国人であるひとりの預言者がこう言いました。
「クレテ人は昔からのうそつき、
悪いけだもの、
なまけ者の食いしんぼう。」
これは、クレテ人の詩人エピメニデスの言葉で、クレテ人の弱点を指摘したものです。
テトス1:13ーこの証言はほんとうなのです。ですから、きびしく戒めて、人々の信仰を健全にし、
*証言はほんとう…パウロは12節で言われていることが、クレテ人の特徴として事実だと言っています。
テトス1:14ーユダヤ人の空想話や、真理から離れた人々の戒めには心を寄せないようにさせなさい。
注意すべき点:ユダヤ人の空想話や、真理から離れた人々の戒め。
エペソ4:21ーただし、ほんとうにあなたがたがキリストに聞き、キリストにあって教えられているのならばです。まさしく真理はイエスにあるのですから。
*ユダヤ人の空想話…ユダヤ人の律法主義者、パリサイ人たちは律法の一部に非常なこだわりを示したり、口伝律法によって神が命じていないことまでも付け加えたりしていました。
テトス1:15ーきよい人々には、すべてのものがきよいのです。しかし、汚れた、不信仰な人々には、何一つきよいものはありません。それどころか、その知性と良心までも汚れています。
*すべてのものがきよい…律法主義者たちのこだわりの一つ。きよいかきよくないかを気にするあまり、他の人々にも食物を断つことを禁じたりしていました。
使徒10:28ー彼らにこう言った。「ご承知のとおり、ユダヤ人が外国人の仲間にはいったり、訪問したりするのは、律法にかなわないことです。ところが、神は私に、どんな人のことでも、きよくないとか、汚れているとか言ってはならないことを示してくださいました。
使徒10:35~36ーどの国の人であっても、神を恐れかしこみ、正義を行なう人なら、神に受け入れられるのです。
神はイエス・キリストによって、平和を宣べ伝え、イスラエルの子孫にみことばをお送りになりました。このイエス・キリストはすべての人の主です。
テトス1:16ー彼らは、神を知っていると口では言いますが、行いでは否定しています。実に忌まわしく、不従順で、どんな良いわざにも不適格です。
*行いでは否定…偽教師の特徴の一つは、言行不一致。
*不従順…本当にキリスト・イエスを信じ、愛する者はキリストの戒めを守ります。
ヨハネ14:23ーイエスは彼に答えられた。「だれでもわたしを愛する人は、わたしのことばを守ります。そうすれば、わたしの父はその人を愛し、わたしたちはその人のところに来て、その人とともに住みます。